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 第2次世界大戦下の英国を舞台に、一人の女性脚本家の活躍を描いた『人生はシネマティック!』が公開された。

 1940年、ロンドン。広告会社に勤めるカトリン(ジェマ・アータートン)は、ダンケルクで英軍兵士を救った双子の姉妹を描く映画に、脚本家として参加することになる。

 だが、軍事政府の横やりや検閲、激化する空襲、それぞれに事情を抱えた俳優やスタッフたちなど、さまざまな事情から撮影は遅々として進まない。果たして映画は無事に完成するのだろうか。

 その昔、時の英国首相ウィンストン・チャーチルが、英国を舞台にしたハリウッド製の戦意高揚映画『ミニヴァー夫人』(42)について、「この映画は、敵の小艦隊一個分を破壊したぐらいの戦力があった」と評した逸話は有名だ。本作の中で、スタッフ、キャストが懸命に作るのは、そんな戦意高揚のためのプロパガンダ映画である。

 だが、その目的はどうあれ、観客の心を打たなければならないという点では普通の映画と何ら変わりはない。だから本作には「映画に大切なのは信ぴょう性と楽観だ」、「映画は現実から退屈な部分を削る」など、映画のストーリー作りの本質を言い当てたようなせりふが登場する。

 また、本作の背景は戦時下という特殊なものだが、映画作りにまつわる喜怒哀楽はどんな製作現場にもつきものだ。その意味では、本作の中に、現代の映画製作の舞台裏を描いたフランソワ・トリュフォー監督の『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73)との共通点を見いだすこともできる。見ている側も、映画作りに参加しているような高揚感が味わえるのだ。

 加えて、本作の監督、脚本、主役は皆女性ということもあり、独自の視点から映画作りに新風を吹き込み、人間的にも成長していくカトリンの姿を通して、女性の自立を描くことも忘れてはいない。そこに現代的な視点が表れていると言ってもいいだろう。

 また、同じ出来事を題材に、鳥瞰的な戦争物として描いた大作『ダンケルク』と、市井の側から外伝的に描いた本作が、同時期に作られた事実も興味を引く。

 と、いろいろと見どころの多い映画ではあるのだが、こうした映画製作の舞台裏を描いた映画は、筆者も含めた映画好きのつぼを刺激し、うれしくなって点数を甘くさせるところがあることをお忘れなく。(田中雄二)

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