相葉裕樹  撮影:源 賀津己 相葉裕樹  撮影:源 賀津己

2005年の初演以来、全国の中・高等学校などを巡演して、この種の公演としては異例のヒットとなった『3150万秒と、少し』。イギリスの小説「NEW YEAR'S DAY」をベースに、劇団青年座文芸部の藤井清美が書き下ろした“青春ジュブナイル”だ。「人は死に直面したとき何を思うのか」という問いを、主人公の少年たちが傷つきながらも真っ向から受け止めるさまは衝撃的ですらある。東京・天王洲 銀河劇場で2月15日から始まった本作において、メインキャストを務めている相葉裕樹と小澤亮太に聞いた。

舞台『3150万秒と、少し』チケット情報

最初に台本を読んだ時のことを、「がむしゃらだった17歳の頃を思い出しました」(相葉)、「この内容の深さを、僕自身のキャパシティで受け止められるだろうかと不安になったんです」(小澤)と、それぞれ率直に話すふたり。物語は高校2年生の高野悠也(相葉)と川原直人(小澤)が事故に遭ってクラスメイト全員を亡くし、“生き残ってしまった”という気持ちと“何故友人たちは死ななければならなかったのか”という葛藤にさいなまれるところから始まる。「それってどんなに重い状況なんだろうと、考えるだけで怖くなりますよね」と小澤が話すと、相葉もうなずきながら「もし自分だったらと考えると、自分は悠也みたいな行動をとれるだろうかって考えてしまいます」と神妙な表情を見せる。

だが、死にたいと言い出す直人に、“あるリスト”が終わるまで1年間だけ付き合ってくれと悠也が頼むことで、物語は予想外の展開につながってゆく。本作で核となるのは、その“リスト”の中身だ。「“派手な格好をして大声で歌う”とか、“動物を殺す”とか、ちょっと驚きますよね。それを実行するかどうか、それを通してふたりが何を感じるかは、実際に観て確かめてほしい」(相葉)、「そのリストは何のためか?というのが、ストーリーの仕掛けになっていて。そこがこの作品の面白さだと思います」(小澤)とふたりは口を揃える。そのきわどい表現が成功しているのは作・演出を担当した藤井の手腕だが、今回が本作に初参加の相葉と小澤にとっては、役者として試されている部分でもある。

「さっき僕は悠也と違うかもと言ったけれど、彼の気持ちを理解は出来るんですよ。大人から見たら子どもっぽいかもしれない、そのまっすぐな行動がうらやましくて。だから観ている方も、同じように応援する気持ちで悠也と直人を観ているのかもしれないなと感じています」と相葉が言えば、「優等生だけど行動的ではない直人が、悠也に引っ張っていってもらうことで彼らの関係も変わっていく。ふたりは全然違うタイプで別の視点をもっているからこそ、お客さんもそれぞれの目線でこの物語を観ることが出来るんだと思います」と小澤。ごまかしの効かない、まっすぐな舞台。登場人物も役者自身も体当たりでぶつかっていくから、本作は観る者の胸を打つのだろう。

公演は2月24日(日)まで。その後、2月27日(水)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティでも上演。チケット発売中。

取材・文 佐藤さくら