『横道世之介』に出演した高良健吾と吉高由里子

吉田修一氏の小説を実写映画化した『横道世之介』(沖田修一監督)に出演する俳優の高良健吾、女優の吉高由里子が取材に応じ、『蛇にピアス』以来5年ぶりとなった再共演を振り返った。この5年で俳優として大きく飛躍した二人は「あれ以来、吉高さんは気になる存在で、出演作も見てきた。お互いにたくさん現場を踏んできたし、今回はいい意味で気を使わずに済んだ」(高良)、「周りから『高良さん、いいよね』って声を聞くと、自分のことのように嬉しくって。私にとっては幼馴染であり、腐れ縁を感じる人」(吉高)と互いへのシンパシーと“絆”を再確認し、本作でさらなるステップアップを遂げている。

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原作は、2008~09年に毎日新聞で連載され、2010年本屋大賞3位、第23回柴田錬三郎賞を受賞した人気小説。1980年代を舞台に、人懐っこい上京したての大学生・横道世之介(高良)と、恋人で社長令嬢の与謝野祥子(吉高)ら個性的な面々が織りなす青春群像を、ユーモアを交えながら暖かな視点で描く。

高良にとっては、映画『南極料理人』、『キツツキと雨』などに続いて沖田監督と4度目のタッグを果たした。自身が演じた世之介は「日常にあふれている楽しいことを、純粋に面白がれる人物」だといい、「きっと他の監督さんだと、もっとコメディ色が強い役作りになっていたはず。でも沖田組だと、そんな必要もなくて“普通に生きる”世之介を演じることができた」と胸を張る。

そんな高良に対し、吉高は「例えば積極的にスタッフさんに話しかけたり、現場での存在感や前進している姿を目の前で見せてくれた。すっかり頼もしい主演になっていて、こちらが甘えちゃいそうなほどの信頼感を感じた」とその成長ぶりに驚いた様子。一方で「ときどき懐かしい高良さんも垣間見せてくれるんですよ。素朴な核の部分は変わらないというか…」と目を細める。高良も負けじと「吉高さんは動物的な勘で、段取りもなしに自分にしか演じられない祥子を表現した」と“盟友”に賛辞を送った。

『蛇にピアス』での共演以来、互いに切磋琢磨し、気づけば人気と実力を兼ね備え、日本映画界になくてはならない存在になった高良と吉高。「自分らにしかできない間合いやテンションを表現できた」(高良)という言葉通り、『横道世之介』には深い絆で結ばれた俳優同士の火花が静かにスパークしている。二人にとっても大きなターニングポイントになったはずの本作は、ファンならずとも必見なのだ。

『横道世之介』

※取材・文・写真:内田涼