中田秀夫監督

『クロユリ団地』の公開も控える中、『リング』などで世界に知られる中田秀夫監督が、1本のドキュメンタリー映画を発表した。このたび公開される『3.11後を生きる』で、中田監督は東日本大震災の被災地を取材。様々な立場の被災者と正面から向き合っている。

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今回、“震災”を題材にドキュメンタリーの製作に至った経緯を中田監督はこう語る。

中でも、1番思いをめぐらせたのは、生き残った人々の心情だったという。確かに、一人娘と孫三人を失い、「なぜ未来のある娘や孫が死んで、年長者の自分が生き残ったのか?」と自問を続けるスナック経営者の三浦さんをはじめ、登場する人々の重みのある言葉は心に深く響く。「想像を絶する恐怖と悲しみに直面し、すべてを失いながらも、皆さん、懸命に今を生きている。その言葉に耳を傾け、姿をしっかりとみてほしい。“3.11後、我々はどう生きていくのか?”。このことをもっと私たちは深く考えなければならない気がする」。

この取材を経て、中田監督は五十嵐氏の実話を基に、世界10か国の監督が参加したメキシコのオムニバス映画『Words with Gods』に収められた短編『四苦八苦』を完成。ここからもわかるように、今回出会った人々との縁は大切にしたいと監督は語る。「もう1年近くお会いしていない方もいて、その後、皆さんがどう生きているのか、とても気になっています。ある意味、この映画は“まだ、未完成”。自分がどこまでのことが出来るかわからないですけど、皆さんのその後を見守っていきたい」。

『3.11後を生きる』

取材・文・写真:水上賢治