藤沢周平の傑作短篇2作を、キャラメルボックスが一挙舞台化

2013.2.25 20:16配信
『隠し剣鬼ノ爪』  撮影:伊東和則 『隠し剣鬼ノ爪』  撮影:伊東和則

藤沢周平の傑作短篇『隠し剣鬼ノ爪(かくしけんおにのつめ)』『盲目剣谺返し(もうもくけんこだまがえし)』を、演劇集団キャラメルボックスが一挙舞台化。2月23日、東京・サンシャイン劇場にて初日の幕が開いた。本作はキャラメルボックスの人気スタイル“ハーフタイムシアター”での上演で、2本の作品をそれぞれ60分で上演する、短篇小説ならぬ“短篇演劇”である。

演劇集団キャラメルボックス 公演情報

かつて同じ道場で学んだ友・狭間弥市郎を討てと命じられた片桐宗蔵。というのも狭間は上役を斬った罪で捕えられるも脱獄、人質を取った上で片桐を呼んでいるという。狭間との決闘が逃れられないものだと悟った片桐は、狭間の元へと向かうが…(隠し剣鬼ノ爪)。文武両道ながら、藩主の毒見役を勤めていて毒にあたり盲目となってしまった三村新之丞。妻・加世は夫を献身的に支えるが、三村は病の回復を祈願するためにと寺へ行っていた妻のある変化に気づく。ほかの男と会っているのではと疑う三村は、老僕の徳平に加世の尾行を命じる(盲目剣谺返し)。

短篇時代劇としては初の試みとなる本作。過去数々の傑作時代劇を作り上げてきたキャラメルボックスだが、これまではある種の青春もののような、若々しさを感じる作品が多かったように思う。しかし今回の2作は、明らかにそれらとは一線を画する。もちろん藤沢周平の原作ということもあるが、非常に大人な、落ち着いた印象。静謐な中に、人間の哀しさ、激しさ、愛おしさを浮かび上がらせ、それぞれ60分の作品とは思えないほどの深い感動を観客の心に残す。

『隠し剣鬼ノ爪』で主役の片桐を演じたのは畑中智行。何でもできる、悪い言い方をすれば“器用”な俳優だが、今回舞台上にいたのは、何とも実直な、不器用な男。それを決してやり過ぎず、抑えた演技で見せた畑中に、俳優としての大きな成長を見た。そして『盲目剣谺返し』で主役の三村を演じたのは大内厚雄。目が見えないという難しい役どころだが、そこはさすがのベテラン。三村のやるせない思いが痛いほど伝わり、その迫真の演技からは三村を覆う漆黒の闇さえ感じられるようだった。

タイトルにもあるように、“鬼ノ爪”“谺返し”と言われる隠し剣が作品の大きな鍵を握っている。しかし本当に大切なのは隠し剣ではなく、その先でいかに人々が力強く生きていくのかということ。それこそキャラメルボックスが長年描き続けてきたものであり、印象は変わっても、やはり変わらないキャラメルボックスの“核”がそこにあった。

公演は3月10日(土)まで。その後、3月14日(木)から大阪・サンケイホールブリーゼでも上演。ともにチケット発売中。

取材・文:野上瑠美子

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