「ゆうばり映画祭2013」グランプリは『暗闇から手をのばせ』

2013.2.27 18:10配信
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013」の様子

今年で第23回となる「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013」。『SRサイタマノラッパー』の入江悠監督など、この先注目のクリエイターを輩出してきたオフシアター・コンペティション部門のグランプリ作品が24日(土)、塚本晋也審査員長ほか4人の審査員によって厳正なる審査のもと、選出された。

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今回のオフシアター・コンペティション部門は全10本。長さもジャンルもバラエティに富んでいて、最終的にどの映画も「どうしてこうしたんだろう」と、作り手に話を聞いて見たくなるような、問いが出てしまう映画がそろった。

そんななか、見事グランプリを受賞したのは、戸田幸宏監督の『暗闇から手をのばせ』。軽い動機で障害者専門のデリヘル嬢になった沙織(小泉麻耶)を主人公にした、監督いわく「社会から黙殺された人々にスポットをあてた」映画。全身タトゥーの入った進行性筋ジストロフィー患者、みずからの障害をネタに本番行為を強要する常連客、バイク事故で体の自由を奪われた、殻に閉じこもる青年…といった人たちに接するうち、沙織の中で何かが崩れはじめる…。障害者やデリヘル嬢の日常を描きながらも“なんのために生きるのか”についてじわじわと考えさせる、力強い作品である。

塚本晋也審査員長は今回の選出理由について、「『暗闇から手をのばせ』はとても難しいテーマを最後まで見せ切ってしまう力があった。自分がどうしてもこの映画を作りたい、というエネルギーに満ち溢れていて、最後までどっぷりと見せ込んで、お客さんに考えさせる力があった」と語る。

受賞した戸田監督は、もともとはNHKエンタープライズに所属し、情報番組作りに携わっていただけあって、映像や物語の構成技術が巧みだったのも評価されたようだ。戸田監督はこの作品について「大阪で実際に昼間は障害者介護、夜は障害者風俗店をやっている人物に取材していくうちに、どうしても作品にしたい思いが先行し、映画化に至った」と言う。扱うテーマが重いことから、あえて今までやってきたようなドキュメンタリー手法の仕様にはせず、次が観たくなるようなエンターテインメントの軽やかな手法を意識し、初めて俳優に演出をつけてドラマ風に仕立てたことは、今回の大きな挑戦だったようだ。

「これからもタブーに挑戦するテーマで。自分が作るという強い意思をもっていれば、誰も作ることを止めることはできないという思いで、年に1~2本は挑戦していきたい」と意欲を語った戸田監督。ゆうばり映画祭のテーマでもある「1歩その先」を見つめた戸田監督の今後の活躍にも注目したい。

「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013」主な受賞一覧
●オフシアター・コンペティション部門グランプリ
『暗闇から手をのばせ』
3月23日(土)より、ユーロスペースほか全国順次上映

●シネガー・アワード
『暗闇から手をのばせ』戸田幸宏監督

●北海道知事賞
『冬のアルパカ』原田裕司監督

●審査員特別賞
『ケランハンパン』寒竹ゆり監督

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