『フライト』を手がけたロバート・ゼメキス監督(C) 2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ロバート・ゼメキス監督がデンゼル・ワシントンを主演に迎えて描く3年ぶりの新作映画『フライト』が明日から日本公開される。『フォレスト・ガンプ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など数々の作品で観客を魅了してきたゼメキス監督は本作でどんなドラマを見せてくれるのだろうか? PR来日した際に話を聞いた。

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過去へとタイムスリップする冴えない高校生マーティ、知能は少し劣るが純真な心をもったフォレスト、呪いの連鎖に立ち向かう勇敢な男ベオウルフなど、ゼメキス監督の作品はいつも観客が応援したくなるキャラクターが中心に据えられてきた。しかし、新作『フライト』の主人公ウィトカーは、事故で急降下する旅客機を軟着陸させ乗客を救った英雄でありながら、疑惑の渦中にいる男で欠点もとても多い。ところがゼメキス監督は「脚本を読み始めてすぐにウィトカーに魅了されました。脚本には欠点を含めて人間味のある人物が描かれていたからです。読み終わってすぐにこれは撮るべきだと思いました」と振り返る。

本作は、未曾有の事故から人々を救った英雄であり、乗客を極めて危険な状況に陥れた容疑者でもあるウィトカーの姿を見つめ、事故に隠された真実を探るサスペンスでもある。しかし、ウィトカーの本性を描かなければ観客の彼への興味はなくなってしまうし、本性をすぐに描いてしまえばサスペンスは成立しない。「それこそがこの映画の最大のチャレンジでした。観客はデンゼルが演じる役を見守るわけですが、観客がどんな時もウィトカーを見捨てないのはデンゼルの才能に依るところが大きいと思います。デンゼルのすごいところは虚栄心がないことで、いつも役の深い部分まで入り込んで、真実を見いだそうとする。それが人間の闇の部分でもです。だから、たとえ役柄に失望するような部分があっても、観客はデンゼルのことを見捨てないで観てくれるんだと思います」。

ウィトカーは一体、どんな男なのか?カメラは終始、彼に寄り添い、観客もまた、彼のことを見つめ続けることになる。「この映画は“キャラクター”を描いた作品です。観客はウィトカーを観察し、自分の“道徳観のコンパス”と照らし合わせながら物語を観てくれるのだと思います」。

デビュー以来、ゼメキス監督はつねにキャラクターとストーリーを重視してきた。だから本作が“12年ぶりの実写映画”だと繰り返し言われることには心底うんざりしているようだ。「私にとってすごく不思議なのは、“実写でないと映画じゃない”と思っている人が想像以上にいることです。デジタルやアニメが実写よりも劣っているという人までいます。私にとっては映像が動けば映画だし、作品づくりの方法や過程も変わらないんです。だから“実写かどうか”という質問には本当に飽き飽きしているんです」。

『フライト』
3月1日(金)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

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