『ホテル マジェスティック』稽古場より 『ホテル マジェスティック』稽古場より

ベトナム戦争の現場で撮った写真「安全への逃避」が1966年のピュリツァー賞を受賞するなど、報道ジャーナリストとして活躍した澤田教一。後を追ってやってきた妻のサタや、共に活動した仲間たちと逗留していたホテル名をタイトルにしたのが、この舞台『ホテル マジェスティック』だ。澤田を演じるのは、これが初舞台となる玉木宏。連日の稽古に励む玉木に、今の心境を聞いてみた。

舞台『ホテル マジェスティック』チケット情報

「毎日すごく濃密な時間を過ごしていますね。お芝居って正解がないものだと思うし、相手がこう動いたら、こちらはこう動くっていう風にどんどん広げられるものでしょう。台本だけでは分からなかったことが、稽古場で新しく発見できたりして、稽古というよりお芝居の勉強をしている感じが楽しいです」

稽古はちょうど折り返し地点を過ぎたところ。前回のインタビューで「演劇ならではの、一度始まったら舞台上でずっとその役を“生き切る”体験を味わいたい」と初舞台の理由を語っていた玉木。「いま全体を固めているところなんですが、役に没入できるというのかな。芝居のリズムが自分の中に出来てきているのを感じています。演出の星田(良子)さんは結構なハイスピードで稽古を進めていくので、初めはついていくだけで必死だったんですが(笑)。今は段々と、稽古場ではどんな風にも演じられるということを、客観的に考える余裕も出来てきて。そこは、繰り返し稽古がある舞台ならではの魅力ですよね」

公演に合わせてオンエアされるドキュメンタリー番組の撮影で、玉木は澤田の出身地である青森や、ベトナムにも向かったそう。「今もご健在のサタさんに『現在の、平和なベトナムを撮ってきてほしい』と言われて、ホーチミンの街を撮ってきました。ホテル マジェスティックは昔と同じ場所に今もあるんですが、9階の屋上にオープンテラスのバーがあるんですね。そこに座って見えるのは、街とは反対方向に広がる運河。澤田さんもお酒を飲みながら、仲間と共にひとときを過ごしたと聞いて、感慨深いものがありました」当時の澤田と現在のサタをつなぐ玉木の写真は劇場ロビーで展示されるというから、こちらも楽しみだ。

「家でも台本をずっと持ち歩いています」と笑った玉木の顔からは、日々の充実が伝わってくる。そんな彼が全身で紡ぐ、澤田教一というカメラマンの生涯。これを見逃す手はないだろう。東京公演は、3月7日(木)から17日(日)まで新国立劇場 中劇場にて。その後、3月20日(水・祝)から24日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、3月26日(火)から27日(水)まで名古屋・名鉄ホールにて上演。チケットは発売中。

取材・文 佐藤さくら