春は、例年、年間で最も携帯電話が売れる時期。学校や多くの企業の新年度のスタートが4月だからだ。こうした春の新生活需要を取り込もうと、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの主要3キャリアは、現在、学生とその家族を対象としたキャンペーンを実施している。期間は5月31日まで。今回は、新入学・進級を機に子どもにスマートフォンを買ってあげたいと思っている親御さん向けに、各キャリアの学割キャンペーンの「違い」を理解するためのポイントをまとめた。一見横並びに見えるが、内容は微妙に異なっており、そこから各社の思惑が透けて見える。

●ドコモの「応援学割2013」は過去の「学割」利用者や機種変更でもOK!

・ポイント1 キャンペーン対象者<学生本人>

学割キャンペーンを利用して最新スマートフォンを購入すると、月額780円(ドコモ)または980円(au・ソフトバンクモバイル)の基本使用料が3年間、無料になる。ただし、ドコモの学割キャンペーン「応援学割2013」は、ドコモの契約者であれば、端末を新たに購入しなくても、ドコモショップの窓口などで申し込むだけで適用される。過去に同様の学割キャンペーン(前年度の「応援学割2012」を除く)を使った人や機種変更も対象となり、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)だけではなく、既存ユーザーも優遇する内容となっている。これに対して、auとソフトバンクモバイルの学割キャンペーンは端末の新規購入が条件で、機種変更については、auは対象外、ソフトバンクモバイルは初めて学割キャンぺーンを利用する場合だけという制約付きだ。

・ポイント2 キャンペーン対象者<家族>

学生の家族は、3キャリアとも、新規契約またはMNPで、端末を新規購入した場合だけが対象で、機種変更は対象外だ。auとソフトバンクモバイルは、MNPを利用すれば学生と同じ3年、利用しない場合は1年と、基本使用料が無料になる期間に差があるが、ドコモはMNP・新規契約とも3年間無料になる。

総務省の調査によると、携帯電話の普及率は、2012年3月末時点で100%を突破し、一人1台以上の携帯電話を所有(契約)している計算になる。プライベート用の携帯電話は、「家族への国内通話24時間無料」の恩恵を受けるので、同一キャリアで揃えている家族が多いだろう。学割キャンペーンを利用する場合、現実的には、「家族全員でMNPを利用してキャリアを乗り換える」か、「いまのキャリアのまま、追加分を新規契約する」かの二択になる。auとソフトバンクモバイルは、学割キャンペーンを利用して契約した「家族」の無料期間に差をつけて、MNPを優遇している。一方のドコモは差をつけず、MNP獲得に加えて、既存ユーザーの他キャリアへの転出防止と回線増加を図っている。すでに多くのユーザーを抱えているドコモならではの「攻め」と「守り」の二方向戦略といえるだろう。

ソフトバンクモバイルは、学割キャンペーン「ホワイト学割with家族2013」を利用した家族(希望者のみ)に、地上デジタル放送を視聴できる防水仕様のデジタルフォトフレーム「PhotoVision TV 202HW」本体を無料でプレゼントしている。フォトビジョンのキャンペーン適用で、基本使用料も最大25か月間は無料となる。ドコモとauには、こうした「おまけ」はない。

・ポイント(3)月額料金

スマートフォンは、OSやアプリがバックグラウンドで自動的にデータ通信を行う場合があるので、常にモバイルデータ通信の設定をオフにしている(Wi-Fi環境でしか使用しない)、複数の端末を併用しているなどの特殊なケースを除いて、データ利用量に応じて課金される2段階型のパケット定額サービスではなく、フラット型のパケット定額サービスを選んだほうが無難だ。そこで、学割キャンペーンを利用してスマートフォンを購入し、フラット型パケット定額サービスに加入した場合の月額料金と3年間の割引金額の合計を比べた。端末代は機種によって異なるので、試算には含めていない。

ドコモの学割キャンペーン「応援学割2013」では、スマートフォンに限って、毎月1050円ずつ、最大3年間、パケット通信料を割り引く。基本使用料と合わせた割引額の合計は、主要3キャリアのなかで最も大きい。割引後の通信料金も一番安い。

ソフトバンクモバイルとauは、割引額の合計は同じ。ただし、2月27日に追加した新たな特典(「iPad mini/iPad Retinaディスプレイモデル」のWi-Fiモデルを同時に購入すると、携帯電話の毎月の請求から24か月間1200円ずつ、合計2万8800円割り引き、通常価格2万8800円の「iPad mini」Wi-Fiモデルの16GBモデルなら実質無料で手に入る)を選び、3月31日まで、この特典を選ぶとプレゼントされる1万円分の賞品券を「1万円分の割引」とみなすと、auより、ソフトバンクモバイルのほうが3520円、割引額が多くなる。iPad Wi-Fiモデルを別途買うつもりなら、通常の「基本使用料3年間無料」より、こちらの特典を選んだほうが安く済む。

●2013年2月のキャリア別シェア1位はドコモ 春モデル「Xperia Z」が売れる

「料金が高い」というイメージとは裏腹に、今春の学割キャンペーン適用時に限ると、通信料金は、主要3キャリアの中でドコモが最も安い。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2013年2月の携帯電話のキャリア別販売台数1位は、ドコモだった。2月9日発売の春モデル「Xperia Z SO-02E」の売れ行きが好調だったためで、シェアはスマートフォンだけで44.9%、携帯電話全体では半数近い47.4%を占めた。機種変更でもOKなど、他社より対象が広い学割キャンペーンも追い風になったと思われる。

●キャリア・機種選びは慎重に 通信料金+端末代の合計で比較しよう

通常の通信料金は横並びで、キャリアによる差はほとんどない。スマートフォンは、事実上、フラット型パケット定額サービスの利用が必須になるので、料金の競争が激しくなったからだ。同時に、端末代の分割払いが定着し、通信料金に端末代を加算した毎月の支払い金額で「高い・安い」を判断する人が多くなっている。

「友だちとのコミュニケーションのためにスマートフォンが欲しい」という子どもの望みをかなえつつ、住宅費や教育費などがかさむ家計への負担をなるべく減らしたいなら、基本使用料とパケット定額サービス料など合算した通信料金・端末代と、その合計を比較して、総合的に判断しよう。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。