90年代の半ばは女性の自立を描いた作品も

『結婚しない』DVD-BOX
Amazonで購入



フジテレビ系木曜10時の『最高の離婚』では、瑛太が自動販売機設置会社の営業をしている。営業といっても、機械が故障すれば修理に立ち会うし、空き缶の回収の手伝いなどもする仕事だ。このドラマは30歳の男女4人がメインキャストだが、尾野真千子は瑛太の実家であるクリーニング店の手伝い、真木よう子は自宅のアパートでアロママッサージの仕事、綾野剛は美大の助手という設定になっている。

前クールの木10は『結婚しない』で、菅野美穂が旅行代理店の契約社員だった。仕事はできるが、35歳で契約を打ち切られるという憂き目にあっている。玉木宏も絵描きを目指していた過去はあるものの、32歳でフラワーショップのアルバイト店員という設定だった。

そして、今から19年前の1994年には、この木10枠で山口智子、松下由樹、柳葉敏郎が共演した『29歳のクリスマス』が放送されていた。山口智子はアパレル会社に勤めていて、そこから外食事業部のパブに出向させられてしまう設定。松下由樹はテレビ局の報道カメラマン。柳葉敏郎は商社の通販部門でクレーム処理をする仕事だった。他にも、仲村トオルが工作機械を作っている大手製作所の御曹司、水野美紀が一流物産会社の航空機営業部で働くOLとして出演している。すでにバブルは弾けていたが、それだけに自立をするとはどういうことかがしっかりと描かれていた。このドラマでは最終的に山口智子も松下由樹も結婚しないが、恋と仕事に悩みながら自分の人生を見つけていく女性たちを描いた傑作だった。

 木10枠でバブル期を代表するドラマといえば、やっぱり1988年に田村正和が主演した『ニューヨーク恋物語』だろう。全編ニューヨークで撮影された作品で、岸本加世子、桜田淳子、柳葉敏郎、真田広之なども出ていたシリアスなラブストーリーだ。このドラマで桜田淳子が演じていたのが、証券会社で働く金融ディーラー。アメリカンドリームを叶え、マンハッタンの高級アパートに住むようにまでなる。この頃がバブル絶頂期で、翌年の1989年には三菱地所がニューヨークの象徴であるロックフェラーセンターをまるごと買い取ったりしていた。今では考えられないが、当時は不動産会社もドラマ制作の現場も資金は潤沢だったのだ。

バブル期の花型職業はコンパニオン!?

『理想の息子』DVD-BOX
Amazonで購入

TBS系の金曜10時も伝統のドラマ枠だが、今期の『夜行観覧車』では、宮迫博之が演じる遠藤家の夫が、家の内装などをする工務店勤務となっている。かなり無理をして高級住宅街に家を立て、鈴木京香が演じる妻もローン返済のためスーパーでパートをしている設定だ。鈴木京香は、『きらきらひかる』の法医学教室助教授、『ブラックジャックによろしく』の看護師など、カッコよく働く女性のイメージが強いが、昨年主演した『理想の息子』でも、シングルマザーとしてひとり息子を育てながら食堂でパートをしている役だった。

金曜ドラマ枠にはたくさんの名作があるが、1993年には松田聖子が主演した『わたしってブスだったの?』という作品があった。大石静が原作・脚本を担当したドラマで、松田聖子は大手広告代理店に勤めるコピーライター。時任三郎がグラフェックデザイナー兼アートディレクターの役で、のちに2人で会社を辞めて独立するストーリーだった。松田聖子の若い恋人を演じていたのは当時22歳の西島秀俊で、報道カメラマンを目指している役。西島秀俊は『あすなろ白書』の同性愛者役で最初のブレイクをした人だが、このドラマはその少し前の作品だ。『29歳のクリスマス』同様、このドラマでも恋に揺れながら自分の力でしっかりと働く女性が描かれていた。

『想い出にかわるまで』
DVD-BOX
Amazonで購入

バブル期の金曜ドラマで印象に残っているのは、1990年の『想い出にかわるまで』だろうか。今井美樹と石田純一が共演したドラマで、今井美樹の妹役を演じた松下由樹が一気に注目された作品だった。

このドラマでの石田純一は、東大卒のエリート商社マン。今井美樹は同じ会社のOLで、石田純一との結婚が決まって寿退社するところから物語は始まっていた。その後、松下由樹が姉の婚約者である石田純一を奪ったり、今井美樹の前に石田純一とは真逆の水中カメラマンをしている財津和夫が現れたりと、ドロドロの展開が続くのだが、最後は今井美樹もひとりになって、明るくコンパニオンの仕事をしていた。前向きな再出発がコンパニオンというところが、今振り返るとなんともバブルっぽい選択だった。