派遣社員や契約社員には厳しい現実

今期は他にも、日テレ系水曜10時の『シェアハウスの恋人』で、水川あさみがコピー機を扱う会社のOL役。30歳独身で、閉鎖寸前の営業所に転勤させられるところからドラマは始まっていた。同じシェアハウスの住人である谷原章介も、物語の設定上、自ら会社を辞め、家庭も捨ててきた役だったので、主にコンビニやお弁当屋でバイトをしていた。

また、同じ日テレ系の土曜9時、『泣くな、はらちゃん』では、麻生久美子が海辺の町のかまぼこ工場で働いている。すり身にした魚を板に乗せていくような仕事で、ドラマのヒロインとしてはかなり地味。麻生久美子や同僚の忽那汐里はまだ正社員だが、薬師丸ひろ子はパートだ。

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フジテレビ系火曜9時の『ラストホープ』は医療モノなので、主演の相葉雅紀をはじめ、多部未華子、田辺誠一、小池栄子などもみんな医師だ。しかし、前クールの火曜9時枠で放送されていた『遅咲きのヒマワリ』では、相葉雅紀と同じジャニーズの生田斗真が派遣切りに遭っていた。私立大学を卒業後、派遣社員となって総務のアシスタントのような仕事をしていたが、ドラマの初回で契約を切られて無職に。もともとこのドラマは、新卒の時から就職氷河期だったロストジェネレーション(さまよえる世代)にスポットをあてた作品だったので、登場人物たちの仕事環境も含めた日常はかなり厳しく描かれていた。

TBS系木曜9時の『あぽやん』は、成田空港で働く旅行代理店の仕事にスポットをあてた作品。空港が舞台ということで、ちょっと派手な印象があるが、貫地谷しほりも桐谷美玲も契約社員だ。センダー(センディング業務をする人)といわれる職種で、空港でお客さんにチケットを引き渡したり、搭乗手続きを代行したり、乗り継ぎの案内をしたりするのが仕事。8話あたりからは、この契約社員のセンダーを対象にした人員削減の話も繰り広げられている。貫地谷しほりといえば、数年前まではフルート奏者(2009年『ブザー・ビート』)や和菓子職人(2008年『あんどーなつ』)、落語家(2007年『ちりとてちん』)など、堅実に技術を身につける仕事を選んでいたのだけど……。


総理大臣の安倍さんが、なにやら一生懸命、景気回復の策を講じてくれているようだが、もうしばらくはドラマ内の職業事情も厳しい状態が続きそうだ。

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。