大竹しのぶ  撮影:源 賀津己 大竹しのぶ  撮影:源 賀津己

宮本亜門の演出によるブロードウェイミュージカル『スウィーニー・トッド』が2007年の初演、2011年の再演に続いて3度目の上演を果たす。18世紀末のロンドンを舞台に、運命に翻弄された理髪師が連続殺人魔スウィーニー・トッドとなって残虐な復讐劇を繰り広げる、異色のミュージカル・スリラーだ。今回の再々演では数名の新キャストを迎えるが、亜門版『スウィーニー・トッド』の絶大なる人気を支える二本柱はもちろん続投。スウィーニー役の市村正親と、彼の復讐を助けるパイ屋のミセス・ラヴェットを豪快に演じてきたこの人、大竹しのぶである。

ミュージカル『スウィーニー・トッド』チケット情報

「とても楽しい舞台なので、もう一度演じられる喜びは大きいです。スウィーニーを一途に思うミセス・ラヴェットは可愛い女性だなと思いますし、ナンバーも面白い歌が多いんですね。“死体はお肉にして、パイに混ぜて焼いちゃおう”なんて歌詞を踊りながら高らかに歌い上げる一幕ラストのデュエットは、歌っていて本当に楽しくて」。そう笑いながら、この作品の大きな魅力は巨匠スティーヴン・ソンドハイムによる豊かな楽曲にある、と強調する。

「最初に聴いた時は、どの音が正解なんだろう?と皆で探り合ったりしました。単純じゃないメロディとリズムで、え!? こんな音を出してるんだ!と驚くような不協和音が出てくる。そこがソンドハイムの何とも言えない凄さだと思いますね」。

大竹のミュージカル初挑戦が話題となった本作だが、自身の中ではストレートプレイと線引きする意識はない。それでも “音楽のある稽古場”の心地良さは初演時に実感したことだいう。「本当に信頼関係のある役者同士でないと“この台詞はこう言ったほうがいいんじゃない?”なんて言い合えない。でも歌の場合は“こんなふうに声を出したらどう?”と普通に教え合えることが、すごく素敵だなと思ったんです。先輩も後輩もなく、一緒にひとつの音を出せる喜びをスウィーニーの稽古場で知りましたね」。

市村とのさらなる強固なタッグ、そして芳本美代子、柿澤勇人、高畑充希など新たな顔ぶれとともに作り上げる劇空間の進化にも期待したい。戦慄な出来事も笑いに変えてしまう、そんな愛すべきミセス・ラヴェットとの再会はもうすぐだ。「3度目だからと意識せず、いつも通りに誠実に役と向かい合います。逆に3度目だからこそ、歌の技術の向上を目指したいですね」。

公演は5月5日(日・祝)・6日(月・祝) 神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 ホール、5月10日(金)から12日(日)まで大阪・イオン化粧品 シアターBRAVA!、5月16日(木)から6月2日(日)まで東京・青山劇場にて。東京公演では、5月18日(土)にキャストによるアフタートーク、6月2日(日)東京公演千秋楽にはスペシャルカーテンコールが実施される。チケット発売中。

取材・文:上野紀子