家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2013年2月のスマートフォンの販売台数は、集計開始以来、初の前年割れとなった1月に続き、2か月連続で前年を下回った。ただし前年割れとはいっても、1月は前年同月比97.0%、2月は96.6%。新製品の発売時期のズレを考慮すると、ほぼ前年並みといっていいだろう。3月は、3分の1が過ぎた12日までの累計で前年同期比104.4%と、スマートフォンの販売台数が過去最大を記録した昨年3月を若干上回るペースで推移している。例年、ピークは3月中旬~下旬なので、最終的にはまだわからない。1月と2月は、お目あての機種の発売や値下げ、より有利なキャンペーンなどを期待して購入を見送った人が多かったようだ。

●「iPhone 5」と「Xperia Z SO-02E」に人気集中 2機種だけでシェア34.3%

1月末にスタートし、2月から本格化した今年の春商戦。各キャリアは、例年以上に学生・子どもとその家族を対象とした「学割」キャンペーンに力を入れているようにみえる。そんな2月の携帯電話全体の販売台数1位は、2月9日発売のドコモのAndroid搭載スマートフォン「Xperia Z SO-02E」だった。約5.0インチのフルHDディスプレイを搭載し、クアッドコアCPU、有効約1310万画素のカメラ、防水・防塵など、最先端の技術を結集した「Xperia」の新モデルだ。2~4位には、ソフトバンクモバイルとauの「iPhone 5」の16GBモデル、32GBモデルが交互に並んだ。

通常は、キャリア・容量ごとにカウントしている「iPhone 5」をキャリアごとに合算すると、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」(12.1%)、ドコモの「Xperia Z SO-02E」(11.3%)、auの「iPhone 5」(10.8%)の順だった。2キャリア販売分を合算すると、「iPhone 5」は、発売以来、これで6か月連続トップとなる。しかし2月のトピックスとしては、発売日を含む2月第1週(2013年2月4~10日)から3月第1週(3月4~10日)まで、5週連続1位を獲得している「Xperia Z SO-02E」の躍進と、それに伴うスマートフォンの画面サイズの大型化を挙げたい。

2月に掲載した<2013年1月の携帯電話ランキング、トップの「iPhone 5」に迫る”大画面”の足音>同様、スマートフォンに限って画面サイズ帯別販売台数構成比を集計すると、1月は6.1%に過ぎなかった「5インチ以上」の構成比は、「Xperia Z SO-02E」が売れた影響で2月は23.5%に急上昇した。多くのメーカーが手がけるAndroid搭載スマートフォンでは、今年は「大画面」と「フルHD」がトレンドになりそうだ。

●ドコモの隠れたヒット端末、「P-01E」「AQUOS PHONE EX SH-04E」

続いて、主要3キャリア、ドコモ・au・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、「iPhone 5/4S」については、最初から容量を合算して1機種としてカウントしている。

春モデルの発売を受けて、どのキャリアも順位に動きがあった。特に顕著だったのはドコモ。シェア23.8%でダントツのトップの「Xperia Z SO-02E」に続き、2位には、iモード対応ケータイ「P-01E」が入った。機種変更でも2万円以下(ドコモオンラインショップ価格)と安く、従来型携帯電話を求める層に人気のようだ。前月1位だった「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」は5位にダウンしたものの、本体下部にイルミネーションを採用するなど、主に女性をターゲットにした同じシャープ製の春モデル「AQUOS PHONE EX SH-04E」が3位につけている。

auとソフトバンクモバイルは、前月までと同様、「iPhone 5」が2位以下を大きく引き離してトップだった。au唯一の春モデル「INFOBAR A02」は、13位と滑り出しはやや低調。一方、ソフトバンクモバイルは、春モデルのうち、3位に全8色のカラフルな携帯電話「PANTONE WATERPROOF SoftBank 202SH」、8位に「ARROWS A SoftBank 201F」が入った。3月8日発売の「AQUOS PHONE Xx SoftBank 203SH」も、今後上位に食い込みそうだ。

●テザリング対応スマートフォンは固定インターネットの代わりにはならない

昨年秋以降に発売されたスマートフォンは、ほぼすべてが下り最大75Mbps以上の高速データ通信サービス――ドコモは「Xi(クロッシィ)」、auは「4G LTE」、ソフトバンクモバイルは「SoftBank 4G/4G LTE」、イー・モバイルは「EMOBILE LTE」――と、スマートフォンをモバイルWi-Fiルータ代わりに使える「テザリング」に対応している。この「テザリング」に魅力を感じる人も多いだろう。

各キャリアとも、7GB/月など、利用データ量が契約内容の上限を超えた場合、通信速度を当月末まで128kbpsに制限する仕組みを導入している(ソフトバンクモバイルは「テザリングオプション」未加入で「4G LTE定額プログラム」適用の場合は適用外)。速度制限の解除には申込みが必要で、上限超過後、2GBごとに料金がかかる。「Xperia Z SO-02E」をはじめとした最新スマートフォンは、従来の3G対応スマートフォンとは異なり、上限なしの「使い放題」ではないので注意しよう。

最近、雑誌やウェブサイトなどで、「通信費を節約するには、光ファイバー(FTTH)やADSLなどの固定インターネット回線を解約し、モバイルWi-Fiルータかテザリング対応スマートフォンに一本化すること」というアドバイスを頻繁に見かけるが、速度制限が適用される可能性があるので、データ利用量の多いヘビーユーザーにはお勧めできない。スマートフォンのテザリング機能はあくまでも補助的なもの。自宅のパソコンでも頻繁にインターネットを利用するつもりなら、回線の一本化はあきらめ、別途FTTHなどの固定インターネットサービスを導入するか、パソコン接続専用のモバイルWi-Fiルータとスマートフォンを併用したほうがいい。たとえテザリングを使わなくても、うっかり大容量の動画などを見て速度制限されないよう、使い方に気をつけたい。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

※通信速度制限の詳細については、各キャリアのウェブサイトをご覧ください(一定期間に大量の通信を行った場合、通信速度が制限される場合があります)。

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます