<家電激戦区を歩く>大阪・大阪市(1) キタとミナミと日本橋 安さと人情で売る

2013.3.18 11:00配信
西日本最大の都市、大阪市

西日本最大の都市、大阪市には、全国に展開する家電量販店やパソコン専門店のほとんどが出店している。日本三大電気街に数えられた浪速区日本橋にかつての勢いはないが、そのぶん各地区で激しい競争が展開され、業績不振によって、閉店を余儀なくされた店も少なくない。値引きの文化が根づいた土地柄だが、安売りだけではない人と人のつながりも、リピーターを確保するポイントになっているのが、ほかの地域にはない特性だといえるだろう。(取材・文/佐相彰彦)

<街の全体像>

●繁華街に旗艦店が出店

大阪市の人口は、2月1日の時点で267万8419人で、府内では1位。全国でも、横浜市に次ぐ2位の規模だ。市外からの通勤通学者や出張者が多く、昼間人口は353万人と東京23区に次いで全国2位。近畿地方の経済・交通の中心都市である。

その大阪市の商業地区が、「キタ」と呼ばれるJR大阪駅や梅田駅周辺の一帯と、「ミナミ」と呼ばれる難波駅から心斎橋駅までの一帯。「キタ」はJRや地下鉄の駅のほかに阪急電鉄や阪神電車のターミナルがあり、京都府や滋賀県、兵庫県からも多くの人が入ってくる。阪急百貨店や複合商業施設、オフィスビル、飲食店などが集積している地区だ。「ミナミ」は、JR、南海電鉄、近畿日本鉄道が難波駅をターミナルにしており、和歌山県や奈良県などから訪れる人が多い。駅周辺には、大型ショッピングモールのなんばパークスや大阪タカシマヤなど百貨店、心斎橋周辺にはブランドショップが建ち並ぶ。

大阪を代表する繁華街「キタ」と「ミナミ」には、家電量販店が旗艦店を出店している。梅田駅前にはヨドバシカメラがマルチメディア梅田、難波駅周辺ではヤマダ電機がLABI1なんば、ビックカメラがなんば店を出店している。

●圧倒的な強さを誇る大手3社

大阪市の家電量販店のなかで圧倒的な強さを誇るのは、梅田駅前に2001年にオープンしたヨドバシカメラマルチメディア梅田だ。約5万m2の大型複合商業施設の地下2階から地上4階にヨドバシカメラが、5階から8階にはファッション店や飲食店などがテナントとして入る。ヨドバシカメラの売り場面積は約2万m2で、カメラを中心に、パソコンやテレビ関連のデジタル機器、さらにはオモチャや自転車までを扱う圧倒的な品揃えだ。駅前という立地と1000台収容の専用駐車場によって、市の内外から多くのお客様を獲得している。06年にオープンしたヤマダ電機LABI1なんばは、売り場面積はマルチメディア梅田とほぼ同じ約2万m2で、なんばパークスに隣接する立地を生かして、午前中には付近の住民、夕方にはなんばパークスを訪れる若者などを中心に賑わう。ビックカメラなんば店は、マルチメディア梅田と同じ01年のオープンで、難波駅前の立地を生かして会社員や若者などが多く来店する。

この3店舗の存在は、現金値引きの文化が根づく大阪に、ポイントカード還元で成功した点でも、大きな意味をもつ。

ヨドバシカメラとビックカメラ、ヤマダ電機の進出によって、大きなダメージを受けたのが、かつて日本の三大電気街といわれていた日本橋地区の「でんでんタウン」だ。2001年以降、経営が悪化した家電量販店が相次ぎ、例えば老舗のニノミヤは08年に経営破たんした。そのなかで、日本橋が本拠地の上新電機は、でんでんタウンにあった複数の店舗を再編し、ホビーや音楽関連の商品を扱う業態に変えてファンを獲得している。日本橋地区の店舗で、家電やデジタル機器を扱っているのは、現在はジョーシン日本橋1ばん館とJ&Pテクノランドの2店舗だけだが、郊外では10店舗を展開して売上増を目指している。

一方、でんでんタウンのパソコン専門店で生き残っているのは、パソコン工房やドスパラ、ソフマップなど、全国に展開する企業がほとんど。例外として、単独店舗のPCワンズがネットショップとの連動で成功している。

郊外では、エディオンも力を入れている。吸収合併したミドリ電化が近畿地方を地盤にしていたことから、定評のあるサービスを武器に高齢者やファミリーをお客様として獲得している。郊外中心のコジマは、ビックカメラとともに店舗の変革を模索している段階だ。

●ポイントは「心をつかむ」こと

――クロス 得平司代表取締役

家電量販業界でコンサルティング事業を手がけるクロスの得平司代表取締役は、大阪市の家電ビジネスを拡大するポイントとして、「いかにファンを獲得できるか」を挙げる。「大阪市民が値引き交渉をするのは、もちろん安く買いたいということもあるが、それ以上に店員とコミュニケーションしたいから」。スタッフに自分に合った家電やデジタル機器をすすめてもらうことで、店員を“商人”として育てるのだという。

また得平代表取締役は、「市民のなかにも、いい意味での“商人”精神が根づいている。そうした人情味溢れる人々の心をつかむことがポイント」と説明する。実際、店員と仲よくなったお客様がリピーターになるケースは、多くの家電量販店やパソコン専門店が経験しているようだ。

店舗間の競争については、「東京と比べれば、『キタ』と『ミナミ』の買い回りは少ない」という。それでも、梅田や難波に大手家電量販店が進出したことで、「日本橋の多くのパソコン専門店が閉店したことからもわかるが、競争は存在する」としている。また、ネットショップとの競争はここでも悩みの種だ。「価格だけでなく、お客様に好かれる店員が多いなど、人材も重要だ」と指摘する。

今後の市場動向は、「東京に比べるとクルマを利用する機会が多い。今後は郊外店に力を入れる家電量販店が増えてくるのではないか。大阪にまだ進出していない家電量販店が出店する余地はある」と分析する。上新電機が郊外への出店に力を入れているほか、ケーズデンキが出店する可能性もあり、郊外での競争が激化しそうだ。

→大阪・大阪市(2)に続く

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年3月11日付 vol.1472より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは

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