ミンチに見る“旨さのヒミツ”

挽きたての肉に塩、コショウ、ナツメッグ、牛乳、パン粉、玉ねぎを入れたものをコックが一心不乱に手でこねる。

巨大なボウルを触らせてもらったが、すぐに手をひっこめたくなるぐらい冷たかった。

黒毛和牛の脂の融点は低く、人間の体温で旨みが溶けるおそれがある。そのため冷蔵した肉をミンチにする。ここにもミート矢澤のハンバーグが旨い理由があるようだ。

空気を抜きながら整形したら、鉄板で両面を焼く。その後スチームコンベクションオーブンでミディアムレアに焼き上げる。

音を立てながら届いたハンバーグにはソースも添えられている。

和風ソース、おろしポン酢、デミグラスソースである。和風ソースは、野菜と果物をすりおろした和風ベース。デミグラスソースは寸胴鍋に牛骨、黒毛和牛、香味野菜を入れ、3日間煮込んだ力作。

ナイフを入れた瞬間、あふれ出る肉汁を愛でつつ、音も香りも楽しみたい。表面はきちんと焼けているが、中心はミディアムレア。

好みのソースを付ける前に、肉そのものの味を鑑賞したい。ジューシーな食感。ほどよい噛み心地。ハンバーグを食べる醍醐味を、五感で味あわせてもらった。

ランチもディナーも連日大盛況で行列ができる。並ぶのが苦手な人は、ランチなら14時のラストオーダー直前、ディナーなら17時が狙い目らしい。

東京駅を起点に旅に出る人は、「大丸東京店」地下1階にあるミート矢澤直営の「大丸東京テイクアウトステーション」を覗いてみよう。「お肉の細道」の入口にあるテイクアウト専門店だが、その場で焼いたハンバーグやステーキが入った弁当を供している。

肉を焼くシーンをガラス越しに見学できるのも、肉好きには堪えられない。

当時のバイヤーがミート矢澤を誘致した。何度も五反田に通い、ランチを食べ、ミート矢澤に惚れ込んだことから出店を提案した。

ミート矢澤のハンバーグやステーキ弁当を旅の友に選べば、楽しい旅ができるに違いない。

【ミート矢澤】

東京都品川区西五反田2-15-13ニューハイツ西五反田
電話 03-5436-2914
営業 11時~15時(LO14時)、17時~23時半(LO22時半)
土日祝11時~16時、16時~23時半(LO22時半)
無休

ランチのフィレコンボはライス、ミニサラダ、味噌汁が付いて6,280円。ただし、ディナーは単品。ランチでは、黒毛和牛ハンバーグを1,500円から提供している。

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。