『はじまりのみち』(C)2013「はじまりのみち」製作委員会

加瀬亮が巨匠・木下恵介監督を演じる映画『はじまりのみち』の新映像が公開された。木下監督の実話を基にしながら、監督の存在を知らない観客も楽しめるように描かれた母子の物語だ。

『はじまりのみち』動画

『はじまりのみち』は、戦時中、木下が脳溢血で倒れた母を疎開させるためにリヤカーに乗せて山越えをした、という実話を主軸に、血気盛んな映画青年として軍部に睨まれ、松竹を一時離れるきっかけとなった『陸軍』の製作時のエピソードを盛り込みながら、子を想う母と、母を想う子の愛の物語を描く感動作。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『カラフル』などを手がた原恵一が監督を務める。

木下恵介監督は、1912年に生まれ、1933年に映画会社の松竹に入った。1940年に徴兵されるが翌年に負傷して帰国した後に監督となり、日本初のカラー映画『カルメン故郷に帰る』や『二十四の瞳』など数多くの映画と、TVドラマを手がけた。繊細な人間描写が高く評価され、同じ年に監督昇進を果たした黒澤明監督と比較されることも多い巨匠監督だ。

本作はそんな木下監督の生誕100周年を記念して製作された作品で、木下監督の実話と、彼の作品に登場するモチーフを巧みに取り入れて映画づくりが行われた。このほど公開された予告編でも劇中のシーンと、木下作品の名シーンが交互に登場しており、本作で映画史に残る傑作の“はじまり”の瞬間が描かれていることがうかがえる。しかし映像の後半では、夢に破れ、戦時下で夢を見ることすらできなくなってしまった主人公が、母の温かな眼差しを受けて、自分自身を取り戻そうとする普遍的なドラマが描かれている。

本作でメガホンを執った原監督は、小さな子どもから映画ファンまで魅了するアニメーション作品を数多く手がけてきた映画作家だけに、『はじまりのみち』は原監督が長年敬愛し続けてきた木下監督への尊敬や愛情が描かれながら、同時に幅広い観客が楽しめる人間ドラマになっているのではないだろうか。

『はじまりのみち』
6月1日(土)ロードショー

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます