『ラストスタンド』(c)2012 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

アクションに年齢制限ナシ! それを体現すべくハリウッドに“アイル・ビー・バック”してきたアーノルド・シュワルツェネッガー。およそ2期を務めあげたカリフォルニア州知事の職を退き、10年ぶりの主演作として彼が選んだのは『ラストスタンド』。役者として最前線で活躍していたときと同じアクションだった。

その他の画像

「私は7年にわたり政界で働いてきた。その間、映画界では決してありえないこともいろいろと経験してきた。が、だからといってそれを活かした映画に出ようとは一度も考えたことがない。観客がそんな私を見たいとは思えないからだよ」。とはいえ、その7年間の貴重な経験を活かしてないかと言えばそんなことはまったくない。ワンマンで無敵、人間味に欠けるアクションを得意としていたシュワが、ここでは身大。心も身体も痛みを味わい、年齢という弱みまで見せる年相応の老保安官を演じているのだ。

「持っているモノは何でも使う。それが私のポリシーだ。だったら年齢、そう、私ももう66歳だから、それをフルに使う。笑いが演出できるだけでなく、リアリティまでプラスできる。アクションをするときも“ヨッコラショ”という感じを出すようにして、私自身が身体を使っていることがちゃんと伝わるようにしたんだ」。その“笑い”で言うなら、全米の若者に絶大な人気を誇る『ジャッカス』シリーズのコメディアン、ジョニー・ノックスヴィルがシュワと一緒に戦う銃器オタク役として登場。実は彼の出演にこだわったのもシュワだという。

「彼のコメディセンスはバツグンだというのが最大の起用理由なんだが、そのほかにアクションのコントラストもある。私のアクションは基本、すべて成功する。敵を撃てば必ず当たるわけだ。しかし、ジョニーの場合はその正反対で、必ず失敗する。私のアクションで爽快感を味わい、ジョニーのアクションで笑う。このコンビネーションがこの映画のアクションを新しくしていると思う」。自分の得意分野であるアクションにこだわりつつ、8年前と同じものを見せるつもりはないというこのプロフェッショナルぶり。シュワがたとえ歳を重ねようとアクションの第一線にいられるのは、現在の自分自身をクールに見据えることができるからなのだろう。

「66歳の私が、人の手も借りず、たったひとりで“ターミネーター”のようなアクションをしたらどうなる? おそらく観客に笑われるだろう。ただし、その笑いは“失笑”なんだよ」。ちなみに、これからの主演作は全部アクションとコメディ。徹底しているシュワだった。

『ラストスタンド』
4月27日(土)全国ロードショー

文:渡辺麻紀