山中さわお 山中さわお

山中さわおの全国ツアー「Buzzy Roars Tour」が3月30日、東京・高円寺HIGHからスタートした。

1989年の結成以来、フロントマンとしてthe pillowsを牽引してきた山中だが、今回のソロ活動は初めて“the pillows活動休止”という状態の中で展開。2013年1月、初のソロシングル『Answer』、2月のソロ3rdアルバム『破壊的イノベーション』は、これまでのソロ活動とは明らかに意味合いが異なっていた。ソロ活動はバンドのサイドワークとして考え、ソロワークはすべて英語詞でツアーもやらないという一線を超え、活動休止せざるを得なかった状況に真摯に向き合い、その中から絞り出された本気で切実な想いが作品の中に満ち溢れていた。

今回の全国ツアーメンバーは、the pillowsでも鉄壁のサポートを務めるベースの鈴木淳、THE NEATBEATS、Radio Carolineを歴任したドラムの楠部真也、山中がその才能を見出しサポートするバンドgold soundsのギター山倉勇太という布陣。期待と緊張感に満ち溢れたファンで超満員となったステージに4人が登場。「久しぶりじゃないか。みんな元気かい?」とお決まりのMC。思い通りにいかない現実、それでも信念を貫くという強い意志、そこで生まれる孤独や絶望...。アルバムの根底に一貫して流れるテーマを丁寧に届けていこうとするパフォーマンス。構成は3rdアルバムの楽曲を中心に据え、リリース時は“ライブでの演奏を想定していない”と明言していた1st、2ndの曲も見事なライブアレンジに昇華されて演奏された。途中のMCでは山中がボケ、鈴木がツッコミという最近の役回りが逆転する巧妙なやりとりで笑いを誘う場面も。後半、伝説のフォーク・シンガー森田童子のカバー『たとえばぼくが死んだら』のカバーも披露。この曲はツアー会場限定販売でシングルも制作された。このツアーでは23年間の山中の発言をまとめた書籍『山中さわお語録集1989-2012』も入手できる。

メンバー紹介のあと「わかってんだよ。みんなの心の声は見えてるんだよ“早くthe pillowsやれ!”って。わかってんだけど6月まで(ソロ)ツアーあるからそこまでうまく楽しんでさ。そのあとガツンとやるから」とコメント。長いキャリアで培ったバンドへの期待も意識しながら、それでも今回ソロ活動をやる理由と意思を貫こうとする山中の姿勢に胸を打たれる。そして本編ではソロナンバーで盛り上がりと感動を届けてくれた山中が、2度目のアンコール、ギター1本の弾き語りでthe pillowsの名曲『Fool on the planet』を披露。その意外な選曲とそこに込められた感情も、ツアー初日のエンディングに大きな余韻を残した。6月2日(日)東京・Shibuya O-EASTまで続くこのツアー、これからの山中さわお、そして来年9月16日で結成25周年を迎えるthe pillowsの動向を知る意味でも観逃せないものとなりそうだ。

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