背筋が凍るような奉納物も…

架空の嫁と結婚させるというユニークな供養もあれば、強すぎる奉納者の思いをビンビンに感じて恐ろしい気持ちになるものも。

大分県の椿大堂の軒下には、女性の長い髪の毛がおよそ3,000人分垂れ下がっている。軒下で長い間ここに吊り下げられた髪の毛の質感はパサパサで、経年を感じることができる。また、黒く長い髪ばかりなのも奉納の歴史が長いことの現れだろう。

女の命とも言われる髪の毛をばっさりと切るほどの強い願いというのは、一体どんなものだったのか。時間の経過を感じさせる長い髪の毛。迫力がありすぎる。

そして、そのすぐ下に無造作に奉納されるギブスやコルセット、杖や松葉杖の数々……。こういったものの奉納は比較的見られるものだが、髪の毛とのミスマッチさが非日常感を倍増させ、ちょっとしたホラー空間となってしまっている。

大分県の高塚地蔵尊で見かけた「早く犯人が見つかりますように」と、何枚何枚も書かれた祈願文。自分の年齢の数だけ手書きで書かねばならないそうだが、連なった文字には鬼気迫るものがある。

亡くなった人の供養に愛用品を奉納

三重県の朝田寺には、昔から古人の着物を奉納する道明供養という俗習がある。天井から下がる無数の着物は、かなりの迫力を感じさせる。きらびやかな本尊の前に垂れ下がる故人の着物…生々しい供養だ。

「故人の思い入れがある現品」を奉納するというのは全国津々浦々でみられる奉納のスタイルだそうだが、故人のさまざまな想いが渦巻いているように感じるのは私だけではないはずだ。