小澤征悦 小澤征悦

150年もの長きにわたり世界中で愛され続ける長編小説、チャールズ・ディケンズによる『二都物語』。ロンドンとパリを背景に描く壮大な物語を、大胆にも古代日本を思わせる架空の国でのストーリーにアレンジした舞台が、草なぎ剛、堀北真希、小澤征悦らの出演で上演される。今作で国王の息子を演じる小澤に話を訊いた。

物語について、「普遍的な話だからこそ、昔に書かれた作品をこうしていまよみがえらせることができるんですよね。つまり、150年前も今も人は変わらないってこと。愛する人を守る、信じるもののために戦う。誰かのためにやっていることが連鎖して大きな愛が生まれるということが描かれた作品だと思います」と感想を語る。彼の役どころは、国王である父のやり方に反発し、よりよい国をつくるため別の国へと渡る男・マナコ。「マナコはつねに真面目。その真面目さで物語に一本線を通すという役割がある。でも恋に関してだけは、まっすぐすぎるこの姿勢が滑稽に見えるといいなと思って稽古場でいろいろとチャレンジしています。でも、共演の橋本じゅんさんや皆川猿時さんなど、面白い方々とわたりあうのはなかなか難しいです」と笑いながら話す。

マナコを救うことになる謎多き男・スクネを草なぎが演じ、マナコの妻となるヒロイン・サクヤに堀北が扮する。「草なぎさんは演技の瞬発力がすごくて、テンションを上げるのがうまい。やはり場数を踏んでいるだけあるなと思います。堀北さんは、僕よりもずっと大人で落ち着きがある。草なぎさんと“影の座長は堀北さんだね”と言い合っています(笑)」と小澤は言う。

映画『レッドクリフ』なども手掛けた岩代太郎による壮大な音楽も見どころのひとつだ。「僕自身は歌いませんが、歌のシーンには稽古場でも引き込まれます。音はその場を支配するなと思いますね。曲によって舞台にマジックがかかる感じ」と演者としても音楽に魅力を感じている様子。

座席数約2000の劇場でおよそ1か月の長丁場という大規模な公演だが、小澤は「規模に関わらず、あくまでも俳優がやるべきことは世界観のディテールを埋めること」と動じない。「映像出身の人間としては、舞台は勉強させてもらう場という意識。本番前は頭が真っ白なのに、その場に立つとセリフが自然に出てくる感覚は舞台ならでは。そうなるまで、汗かいてつくっていく稽古は宝ですね」と語る小澤がどんな演技を見せるのか、期待が募る。

公演は、東京・東急シアターオーブにて4月3日(水)から30日(火)まで。

取材・文:釣木文恵