圧巻の『藍』、そしてゆるすぎるMCに突入

撮影:(C)岩佐篤樹  拡大画像表示

「ブルースカイ どの街にも/この空はつながっている」という歌詞が今回の全都道府県ツアーにハマる『センチメンタル ホームタウン』は、スキマのパブリックイメージを体現するようなさわやかで親しみやすいポップソング。ピアノとタマゴマラカスだけの飾らない演奏でふたりと観客の距離がグッと近くなる。曲終わりで「ありがとーう!」と呼びかける大橋の佇まいも”となりの兄ちゃん感”が増している気が(笑)。

しかしそこから再びふたりがピアノに向き合い『藍』のイントロが鳴らされると、これまでのやわらかな空気は一変する。これまでのライブでも大きな存在感を放ってきた曲だが、この日の『藍』はこれまで聴いた中でいちばんすさまじかったかもしれない。もはや絶唱の域に達した大橋の歌声、楽曲の悲しみをよりビビッドに映し出す常田のピアノの凄みに加え、このツアーのアレンジは曲に描かれた深い”絶望”をより残酷に、より美しく表現しきっていたと思う。最後の一音が止んだ後の鳴り止まない拍手が、この日の『藍』が観客に残した傷跡の深さを物語っていた。

さすがに緊張がMAXに達したからか、ここでいったんひと呼吸おきましょう。ふー。というわけで、ここでスキマスイッチの名(迷?)物と言える、ゆるいMCタイム。今回のMCには、ひとつの特徴があった。

MCその1【家の話】
大橋「そういえば近所に新しいマンションが建ったんですよ」
観客「どこー?」
常田「言えるわけないでしょ(笑)。そういえばうちの庭にすごいちっちゃい桜を植えたんですけど」
観客「どこー?」
大橋「だから言わないって(笑)」

MCその2【お客さんの話】
大橋「遠くから来た人!」
観客「ブラジル!」
大橋「ええ! このために来たの!?」
観客「そ、そうです!」
常田「ウソだろ(笑)!」

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MCは終始こんな調子(実際はこの数十倍の長さがありました)。そもそも話している内容自体が素朴すぎるというかどうでもいい話題ばかり(すみません)なのだが、今回は特に観客とのやり取りがとても多かった。ふたりの問いかけに答えるだけでなく、どんどん会話に入り込んでくるファンのアグレッシブさもすごい。もはやアーティスト/客という垣根さえもなくなってきていると思えるほどのフランクさだ。

最終的に大橋が「東京ってこれといって話すことないんだよなー」とぼやき出したあたりでステージ前方に移動し、大橋・常田のツインアコギによる『病院にいく』。決してうまいわけではないが一歩一歩ゆっくり前へと進んでいくような演奏は、だからこそ日常の幸せを切り取ったこの曲の世界観を見事に体現していた。