SEKAI NO OWARI SEKAI NO OWARI

SEKAI NO OWARIのライヴをまだ体験していない人に教えてあげよう。それは園内から外の建物や風景が見えないように工夫された遊園地のように、現実の世界を忘れさせる強力なファンタジー空間だ。が、現実の遊園地が夢と希望に基づいて設計されているとすれば、ここでは死や絶望を表現するダーク・ファンタジーのアトラクションも同時に用意されていることを、最初に断っておかなきゃいけない。すべての要素がメリーゴーラウンドのようにぐるぐる回り、乗り込んだ観客を予想もしない深みへ引きずりこむ。ほかの誰でもない、SEKAI NO OWARIのライヴの醍醐味はきっとそこにある。

2月22日に代々木国立競技場第一体育館でおこなわれた「SEKAI NO OWARI ARENA TOUR 2013“ENTERTAINMENT”」。ステージに登場したメンバーの白い服にはべっとりと赤い血のりがついていた。このツアーのテーマ「本当の自分たちらしさとは何だろう?」という問いかけに対し、過去の自分を殺して未来を目指すというメッセージがこめられた、これぞダーク・ファンタジーという鮮烈な演出。1曲目『スターライトパレード』の強烈なエレクトロビートに乗ってFukaseとNakajinはステージを駆け回り、Saoriが力強くピアノの鍵盤を叩き、DJ LOVEが観客をあおる。SEKAI NO OWARIのライヴは、DJ LOVEのあやつる激しくダンサブルなビートが特長で、その重低音の威力は大規模なテクノ・パーティーにも匹敵するほど。セットも照明もゴージャスで、広いライヴ会場はまさにひとつのアトラクションと化している。

四つ打ちのビートで攻めた序盤の激しさから、徐々に曲調のバリエーションが増え、『ファンタジー』『天使と悪魔』『死の魔法』など代表曲を次々と披露。中盤のインターミッションではDJ LOVEが宙吊りのアクションを見せて大喝采を浴び、その後もセンターステージでのアコースティック演奏あり、大量のレーザービームや炎が燃え上がる演出ありと、一瞬も飽きさせないエンタテインメント・ショーが続く。『Love the warz』『幻の命』といったディープな曲では不安と恐怖を、そして『眠り姫』『深い森』といったポップな曲では楽しさと安らぎを。2時間半の中で極端な感情の揺れを感じさせてくれる、SEKAI NO OWARIのエンタテインメントに終わりはない。

アンコールではクレヨンしんちゃん新作映画の主題歌『RPG』を初披露し、さらなる成長を誓った4人。使い古された「百聞は一見に如かず」という言葉を思わず使いたくなるほど、SEKAI NO OWARIのライヴには音源を聴くだけではわからない発見があることを保証しよう。(取材・文/宮本英夫)