いのうえひでのり  撮影:西村康 いのうえひでのり  撮影:西村康

青山円形劇場の濃密な空間で、堤真一、麻生久美子、田中哲司の豪華キャストが繰り広げるSFチックな3人芝居「断色~danjiki~」が6月に開幕。演出を手掛けるいのうえひでのりに話を聞いた。

本作はもともと、「斷食(だんじき)」のタイトルで2011年に誕生。俳優の村木仁、池谷のぶえ、市川しんぺーのユニット“おにぎり”の旗揚げ公演として青木豪が書き下ろし、いのうえの演出で上演された。今回はタイトルのみならず、「マザー・コンプレックスの話にリライトを」というプロデューサーの意向を受け、母子の関係性をより際立たせたものへとテーマが移行。再演というよりは“リニューアル”の名がふさわしい上演となる。

「前回は太った人たちが断食道場に行くという話で、俳優たちの体型ありきみたいなところがあったけど、今回その大前提がすっかり変わって、いい男といい女の話に(笑)。とはいえ、構成が大胆に変わっているわけではなくキーになる大事な台詞も残っていたりするので、作品のテイスト自体はそんなに変わらないと思います。前回、小さい規模の劇場でやったのが僕自身10年ぶりぐらいで、自分の中では、ちょっとガチガチに演出しすぎたなっていう反省点がある。小さい劇場だと細かいところまで見えてしまって、そこを埋めようとする作業をしてしまいたくなるんですよね。今回はもっと役者さんに委ねていいんじゃないかなと思っています」

稽古開始前だが、キャストについては「ベスト」と、全幅の信頼を寄せる。堤は自然農法の畑作を行う息子・保役、田中は怪しげな保険外交員・刈谷役。「つっつん(堤)はこの役の空気をもともと持っている人なので、書き下ろしたといってもいいぐらいぴったりだと思いますよ。てっちゃん(田中)にも抜群の信頼を置いています。言われたことをちゃんと自分の中に落とし込んで、きちんとやることができる俳優さんです」

麻生とは初顔合わせだが、「声もいいし、舞台に普通に立っていられる人」と、これまた太鼓判。麻生は、保の母・朝子と、朝子の死後に保と暮らし始める朝子のクローン・夕子を演じる。ぐるりと観客に囲まれた中で、体当たりの演技が要求される場面も多々ありそうだ。「青木豪の変態性が発揮された(笑)なかなかエグい台本ではありますから、オシャレな感じの麻生さんしかご存知ない方は驚くかもしれません。でも今村昌平監督の映画でデビューしてるんだしね(笑)、そこは意外としっかりとしてらっしゃるから、大丈夫ですよ」

タイトルは「食」から「色」へ。生も性も飲み込んだ濃密な“愛”が、緊密な空間にたちのぼる。

公演は、6月14日(金)~7月7日(日)まで青山円形劇場にて。チケット一般発売は、4月21日(日)より。チケットぴあでは、プレリザーブ抽選先行を、4月9日(火)11:00まで受付中。

取材・文 武田吏都