<家電激戦区を歩く>大阪・大阪市(4) スタッフの経験を提案に生かす イメージしやすい表現とデモがカギ

2013.4.8 10:51配信
ビックカメラなんば店ではソニーの4K対応液晶テレビに人気が集中

お客様と家電量販店スタッフとのコミュニケーションが、購入の決め手になることが多い大阪。そんな特異な市場では、店舗のスタッフがデジタル機器や白物家電を実際に使ってみて、使用感を自分の言葉でわかりやすく説明することがお客様のサイフの紐を緩めるコツのようだ。とくに五感に訴える機器に関しては、擬音などのイメージしやすい表現を交えることが必要になる。そこで大阪では、液晶テレビとサラウンドシステムの売れ行きについて取材してみた。その結果、みえてきたのは、テレビの大型化とサラウンドシステムの購入者層の広がりだった。(取材・文/佐相彰彦)

→大阪・大阪市(1)から読む

<売れ筋商品>

●【液晶テレビ】

「価格が下がれば4K対応テレビは売れる」 レコーダーとの連携を重視

液晶テレビは、大型画面モデルに人気が集中している。ビックカメラなんば店では、「かつてボリュームゾーンだった30インチ台のモデルを購入したお客様が、大画面に買い替えている」(ビジュアルコーナーの石川壽一主任)という。最も売れているのは60インチモデルで、「価格が下がり、購入しやすくなったことが利いている」と分析する。また、「暗所コントラストに長け、暗い場面を細部までリアルに再現するプラズマテレビの人気が高まっている」という。レコーダーとの連携に気を配り、メーカーを揃えるお客様が多いそうだ。

最新の4K対応テレビに関心を寄せるお客様も多い。テレビコーナーを訪れるお客様のほとんどが、展示品の高精細映像を見て、スタッフに機能などを質問してくるという。ただし、「まだまだ価格が高いので、そうは売れない」と石川主任は打ち明ける。対応するコンテンツが少ないことも購入の障壁になっていて、「コンテンツが増えて、価格が安くなれば確実に売れるだろう」ということだ。

ヨドバシカメラマルチメディア梅田では、40~50インチ台の展示に加え、パネルで違いを比較するコーナーを設置。さらに「気になるテレビの選び方」というPOPで、それぞれのモデルの機能や個性をわかりやすく伝えている。「コーナーづくりをスタッフに任せている」(濱田光太副店長)ことから生まれたアイデアだ。

ヤマダ電機LABI1なんばでは、「液晶テレビの売れ行きがようやく戻ってきた」(築田啓司副店長)との判断から、拡販に力を入れている。壁に液晶テレビを掛けて多くのモデルを展示。その近くに椅子を設置して、お客様がさまざまな商品をゆっくり視聴できるようにしている。最近では、「32インチではもの足りないと感じているお客様が、50インチクラスを購入する」ケースが増え、50インチ以上のモデルを充実させているという。

上新電機J&Pテクノランドでも大型モデルが売れており、「32インチクラスはあまり置かず、展示モデルを絞っている」(川井彰店長)という。「海中探検ツアー」という3Dテレビとサラウンドシステムを組み合わせたデモコーナーを設置して、お客様へアピール。3Dテレビは数ははけないが、立体感のある映像と音によってお客様の興味を引いている。

地上デジタル放送への完全移行以後、液晶テレビの販売は厳しい状況が続いているのは、大阪も同じ。しかし、アプローチをかけるサイズを定め、集中して展示するなど、工夫を施すことでお客様を獲得している。

●【サラウンドシステム】

単体で売れる人気商品 ユーザーの裾野が広がる

液晶テレビについて、ユーザーの多くが不満を抱いているのが音質だ。薄型になったぶん、スピーカーの音質を高めるのには限界があり、デジタル放送の鮮明な映像に比べると、どうしても音の悪さが気になってしまう。そこで、脚光を浴びているのがサラウンドシステムだ。家電量販店は、液晶テレビの販売減を補う商品として期待を寄せている。

家電量販店のサラウンドシステムコーナーでは、液晶テレビとセットで展示して映画などを視聴してもらう店舗が多いが、ヨドバシカメラマルチメディア梅田では、サラウンドシステムをしっかりと聞いてもらう専門のコーナーを設けている。当然ながら、メーカーによってサラウンドシステムの音は異なる。「お客様にさまざまな音を聞いてもらって、納得のうえで商品を購入していただく」(濱田副店長)ことを重視しているのだ。

液晶テレビとのセットよりも単体で購入するお客様が多いというビックカメラなんば店では、音質を確かめることができる展示を行うだけでなく、「実際にスタッフが自宅で使って、その感想をお客様に伝えている」(オーディオコーナーの今田純一主任)という。今田主任自らも、さまざまなサラウンドシステムを自宅で体験している。「クリアな音質ならソニーやDENON、厚みのある音質ならオンキヨーなどと、お客様の好みに応じた商品を提案している」。さらに、「テレビでスポーツを視聴することが多い方にはクリアな音質、映画の視聴なら厚みのある音質などと、擬音を使いながら提案すると、お客様がイメージしやすくなる」という。

デジタル機器の専門店、上新電機J&Pテクノランドは、液晶テレビとの接続を提案するだけでなく、「スマートフォンと接続できることをアピールするなど、デバイスの価値が高まる提案でサラウンドシステムの購入につなげている」(川井店長)という。この店では、ソニーのHT-CT260などが売れ筋だ。

大阪の家電量販店では、今はまだサラウンドシステムの売上構成比はそれほど高くない。しかし、「各メーカーがバータイプのラインアップを充実させていて、お客様のすそ野が広がっている」(ビックカメラカメラなんば店の今田主任)ことから、今後は家電量販店の収益に寄与する商品に成長する可能性があるとみる店舗が多い。

■アナリストに聞く「売れる理由」

液晶テレビは、台数・金額ともに前年比30%以上の減少が続いてきた。今年2月は、台数が前年同月比34.7%減、金額が27.8%減だった。ただし、金額に関しては低価格化による減少というわけではない。平均単価は緩やかに上昇していて、アナログ放送終了時と同様の市場構造ではない。現に、40インチ台のモデルの2月の平均単価は、前年同月比15.7%増だった。家電量販店にとっては、いかに粗利の高い商品を売っていくかがポイントになる。

今後、目玉になりそうなキーワードは「スマート」「有機EL」「4K2K」など。しかし中途半端な機能の増強では失敗した「3D」の二の舞になりかねない。新技術を有効に使いながら、一般の消費者が見ても圧倒的な進化が実感できるレベルの製品の登場が求められる。今年はまだ厳しい状況が続きそうだが、ユーザーがわくわくする製品が出てくれば、市場が再び活性化する可能性は十分にある。

サラウンドシステムはバータイプのモデルが主流になり、購入しやすい価格になってきた。平均単価は若干の下降傾向にあるが、薄型テレビの音質を補う製品として定着しつつある。薄型テレビとの組み合わせだけではない用途があることからも、今後成長する商品と位置づけられる。

●家電激戦区「大阪市」を歩いて

ファンの確保に重きを置く大阪の家電量販店では、マニュアル通りの接客では通用しないことが多い。値引きの文化は根づいているが、それだけではない人と人のつながりがリピーターを確保するポイントになっている。

取材を通じて、各店舗のスタッフが思いやりをもってお客様に接している姿を見ることができた。これから先もさらに競争が激化する可能性が高い地域といえるが、お客様に好かれるスタッフが勝利のカギを握っている。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年4月1日付 vol.1475より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは

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