廣末哲万(写真左)と高橋泉

東京のテアトル新宿で開催中の特集上映“ルネッサンスPFF ~新たな映画の歴史に向かって~”で、高橋泉と廣末哲万の映像ユニット“群青いろ”の特集が行われている。ふたりが行う自主上映会は立ち見になるほどの盛況で、様々な映画祭で高い評価を受けている。今回はDVD化されることもなく、観賞の機会が少ない“群青いろ”の作品を一挙に観賞できる貴重な機会だ。

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高橋と廣末はそれぞれ脚本家や俳優として活動しながら、ふたりが揃った際には“群青いろ”を名乗り作品を作り続けている。面白いのは明確な役割がなく、ある作品では高橋が脚本・監督を務めて廣末が主演し、別の作品では廣末が監督して高橋が出演者に回っていたりすることだ。高橋は「映像ユニットと説明するしかないんですけど、ユニットではないと思ってるんです。“群青いろ”は僕と廣末くんの“関係性の名称”だと思っていて、友達でも仲間でも家族でもないので“群青いろ”と呼ぶしかないんです」と笑顔を見せ、廣末は「映画を撮るときはたくさんの方とやっていますけど、群青いろに“染まりにきた”という感じで、入れてほしいと言ってくる人もいないです。僕も高橋さんもそれぞれで活動してますけど、ふたりが揃うと“群青いろ”になる。だからやはり関係性なんでしょうね」と語る。

ふたりの作品が観賞できる機会は数年に1度開催される自主上映会と映画祭だ。そのいずれもが高い評価を集めるが、ふたりは執拗に上映の機会を探ることをあえてしないと言う。高橋が「別に外に出て行きたくないわけではないんですけど、一番自然な形でいたいだけなんですね」と言えば、廣末は「作った以上は観てもらいたいですけど、そんな急ぐことじゃない。何年経ってもいいじゃないという気はします。その時期が来るまで今は作って待つ、という気持ちです」と説明する。

そう断言できるのも、ふたりが時を超えても通用する作品を丁寧に作り続けているからだろう。今回の特集でも2004年から昨年までの作品が上映されるが、その内容は驚くほど古びていない。「日常で起こってることが作品に反映されていますけど、日常で起こっているということは、ずっと昔から起こってることだと思うんですね。そしてこれから先も」(廣末)「そのことについて5年後には考えてないだろうな、ということはやりたくないんです。今は震災の映画とか多いですけど、もし5年後にそのことを考えないのなら今やってほしくないなと思います。ずっと気になってることで、この先も気になり続けることをやっているんだと思います」(高橋)。

ちなみにチラシなどでは告知されていないが、今回の特集上映では各プログラムの上映前に現在編集中の新作のフッテージ映像が上映される。

特集上映“ルネッサンスPFF ~新たな映画の歴史に向かって~”
4月19日(金)まで テアトル新宿に連日レイトショー
※13日(土)はオールナイト上映