写真左から、古田新太、蜷川幸雄  撮影:吉田孝幸 写真左から、古田新太、蜷川幸雄  撮影:吉田孝幸

1973年、蜷川幸雄演出×唐十郎脚本の初タッグ作品として話題を呼んだ『盲導犬』が、初演から40年を経た今年7月、蜷川自らの手によって再演される。宣伝ビジュアル撮影の現場で蜷川と主演の古田新太に話を聞いた。

舞台『盲導犬』チケット情報

『盲導犬』は1989年に一度再演がなされている。しかし、今回は劇中で使用する曲も初演時のものに戻し、70年代当時の空気をより色濃く再現したいと勢い込む蜷川。「40年前はこの戯曲に描かれているように、地下街のコインロッカーの前をうろついている怪しい人たちがいて、町は自警団を作って彼らを追い出した。今はどこも清潔で明るいけど、社会から疎外された人たちは形を変えて存在している。だからこそ、不服従の魂を今見せたいんだ」と再演にかける思いを話した。

伝説の“不服従の盲導犬”を追い求める盲目の主人公・影破里夫(エイ ハリオ)を演じる古田は、この作品に対して並々ならぬ思い入れがある模様。「もともと唐さんの詩的なセリフや、「特権的肉体論」の考え方が大好きだったんです。それに、先日まで唐さんと関わりの深い麿赤兒先輩が(古田が所属する)劇団☆新感線に出てくださっていたので、おいらも唐さんの作品に出なくては、という思いもあって」と意気込む。

蜷川が「初演で影を演じた石橋蓮司を除けば、今この役ができるのは古田さんだけ。彼は怖いものなしのアナーキーな役者。“壊れている”魅力があるんだ」と語れば、古田は「蓮司さんはどうしたってカッコいい。だったらおいらはカッコ悪くやればいいだけのこと。蜷川さんに『なんでそんなことをするんだよ』と言われるくらい、ふざけられるところは全部ふざけようと思ってる」とすでに自分なりの演技プランを練っている様子。

さらに蜷川が当時を回顧して、「70年代に僕が商業演劇に行ったとき、周りから『アングラ出身の演出家がなぜ商業演劇に』と言われ、演劇界で孤立した。そんなときに唐が『一緒にやらないか』と声をかけて助けてくれた。だから、彼がなかなか作品を作れない今こそ、あの頃の空気を俺が伝えなくちゃと思ってる。そういって自分が病気になっちゃ世話ないけど、俺は幸い回復した。まだまだ見せたいものがたくさんあるから、もう少し頑張るよ」と力強く語った。

古田と、「陰のある美しさが最高」と蜷川が褒めちぎる宮沢りえ、蜷川作品常連の小出恵介の3人が現代に70年代のアナーキーな熱を蘇らせる。蜷川が主宰するさいたまネクスト・シアターからは小久保寿人、土井睦月子も出演。

公演は、7月6日(土)から7月28日(日)まで、Bunkamuraシアターコクーンにて。チケットぴあでは、プレイガイド最速先行の「いち早プレリザーブ」を、4月16日(火)11:00まで受付中。

取材・文:釣木文恵