佐々木芽生監督

NY在住のアートコレクター夫妻にスポットを当てたドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』。僅か1LDKのアパートに仰天のアート・コレクションを築いたハーブとドロシーの姿を収めた同作は、世界中で大反響を呼んだ。この度、続編『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』が到着。再びハーブとドロシーを見つめた佐々木芽生監督に話を聞いた。

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前作は、日本でも2010〜2011年にかけて公開され異例のロングランヒットを記録。まず、この反響を監督自身はこう振り返る。「もともと、ハーブとドロシーと、私を含む関わった人たちに喜んでもらえればと思って取り組んだ作品。きわめてプライベートに近いものだったので、世界での反響は“まさか”でした。でも、日本での反響はそれ以上に驚き。というのも実は当初、配給はすべて断られました。結果、有志と力を合せての自主配給。ですから、これほど多くの皆さんが劇場に足を運んでくださるとは夢にも思っていませんでした」。

また、今回の続編の構想は前作のときからすでにあったとも。「前作が完成する直前に、今回の物語の主軸にある、ふたりのコレクションを全米50州の各美術館に50作品ずつ寄贈する「フィフティ・バイ・フィフティ」と名付けられたプロジェクトが発表されました。前代未聞のことですから、これは記録しておこうと思っていました。ただ、当初は、作品というより、美術史を知る際の参考資料になるようなものになればとしか考えていませんでした」。

だが、それが予期せぬ方向へ。最終的に本作はハーブとドロシーふたりのアート・ライフの結末を見届けることになった。「ハーブはドロシーに常々“自分たちのやってきたことは歴史になる”と言っていたそう。そのある意味、集大成といえる歴史的瞬間に私は幸運にも立ち会うことができた。それを許してくれた二人には感謝です」。

ハーブとドロシーとの日々を今はこう振り返る。「私にとってふたりは人生の指南役。かけがえのない存在です。仕事にしてもプライベートにしても、自分にとって何がほんとうに大切なのかを気づかせてくれました。また、私はあることがきっかけでアートを遠ざけていました。でも、今は素直にこう言えます。“アートが大好き”と」。

アートをただただ純粋に愛したおしどり夫婦のハーブ&ドロシー。ふたりが迎えた最終章を見届けてほしい。

『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』
3月30日(土)より、新宿ピカデリー、東京都写真美術館ホールほかにてロードショー

取材・文・写真:水上賢治

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