左から、峯村リエ、犬山イヌコ、坂井真紀  撮影:吉田 孝幸 左から、峯村リエ、犬山イヌコ、坂井真紀  撮影:吉田 孝幸

2008年に初演され、名作揃いのナイロン100℃作品群の中でも“最高傑作”との呼び声高い『わが闇』が、6月より東京・本多劇場で再演される(その後、7月まで地方公演あり)。曇り空の3月某日、都内で行われたイメージビジュアル撮影現場に潜入した。

ナイロン100℃『わが闇』チケット情報

『わが闇』の舞台かつ作品において重要な役割を果たすのが、田舎の古い日本家屋。撮影場所はその空気感を最大限に再現できる、大正時代の日本家屋をそのまま生かしたスタジオで行われた。テーブル以外家具のない十畳間に、メインの三姉妹(犬山イヌコ、峯村リエ、坂井真紀)が揃う。幼い頃から作家として活躍するしっかり者の長女・立子(犬山)は手に本を持って立ち、不誠実な男に嫁いだ貞淑な妻の次女・艶子(峯村)はおぼんを手に居間に入ってきた風。そしてスキャンダルを起こして実家に舞い戻ってきた女優の三女・類子(坂井)は、無造作に足を伸ばして座っている。3人のキャラクターが分かりやすく表現されており、心の微妙な距離感までも伝わるような配置も絶妙。その状態で、リズミカルなシャッター音が響く。坂井が「舞台のチラシっぽいですね」と言うと、立ち会っていた作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が「永井愛さんの作品みたいだよね」と笑顔で返す。ちなみに、まだ台本がなくタイトルのイメージのみで撮影したという初演『わが闇』のビジュアルはコンクリート打ちっ放しの空間での、冷たく抽象的なイメージだった。同じ作品だが、全貌をつかんだ上での今回は、まるで異なるビジュアルとなる。

再演は、キャスト14名全員が初演と同じメンバー。その理由をKERAは、「ひとりでも変わっちゃうと作品全体の雰囲気が変わる。だから再演はできれば、全く変えないか大きく変えるかのどちらかでやりたい」と話す。「『わが闇』は自分でも大好きな作品だから再演したいと思っていた。これや『百年の秘密』(2012年)のようにドラマ性の高いものは、ギャグもののように鮮度云々ではないので、じっくりと数を重ねていくのに向いている」。

5年ぶりに再会した三姉妹の息も既にぴったりだ。「これはほんとに家族劇。お客さんも登場人物の誰かに自分を置き換えて、グッと入り込む感じで観てくれる人が多かった」(犬山)、「親戚が観に来てくれて、旦那さんの言いなりになってる私の役(の気持ち)を『わかるわ』って(笑)」(峯村)、「みんないろいろあるんですよね。それぞれの人にそれぞれのツボがあって、きっとそういうところが観る人をひきつけるんだと思います」(坂井)

演劇界では先駆けとなったプロジェクションマッピングなどの効果も濃密なドラマを盛り立てる、KERA版『三人姉妹』だ。

公演は、6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで本多劇場にて。一般発売は4月21日(日) より。チケットぴあではプリセール(先行先着)を4月20日(土)23:30まで受付中。以降、地方公演もあり。

取材・文 武田吏都