戦時下の青春群像を描く『見上げればあの日と同じ空』が開幕

2013.4.9 14:30配信
舞台『見上げればあの日と同じ空』 舞台『見上げればあの日と同じ空』

平間壮一、戸谷公人をはじめとするアミューズの若手俳優が出演する、舞台『見上げればあの日と同じ空』が、4月4日、新宿・紀伊國屋ホールにて初日の幕を開けた。

『見上げればあの日と同じ空』チケット情報

物語の舞台となるのは太平洋戦争中の日本。オリンピックの代表候補として注目されていたランナーの成瀬勇(平間壮一)と、チームメイトでライバルの大橋公造(戸谷公人)。本作はこのふたりが学徒出陣で特攻隊員となり、出撃するまでの日々を描いた青春群像劇だ。その戦友を、劇団プレステージの向野章太郎を筆頭に、松島庄汰、吉村卓也、伊藤直人が演じ、隊長役を*pnish*の土屋裕一が、成瀬の許嫁役を小松彩夏、その父を久ヶ沢徹が演じる。

コメディ作品に定評のある小峯裕之の脚本だが、この作品では綿密な取材に裏打ちされた構成で、特攻という史実の裏側にいたであろう人々を繊細に描き、重く難しい題材を現代の若者たちに響く形にまとめあげた。それを受けて及川拓郎の演出は、若手俳優たちが持つ勢いを、特攻隊員たちが生命を燃やし尽くす様と重ね合わせて表現している。平間、戸谷を初めとする若手陣も、ひるむことなくこの題材に挑んでいる。舞台上でほとばしる彼らのひたむきさは、時代と関係なく輝かしい青春を描き出し、そのことによって、特攻という時代の残酷さが浮かび上がるのだ。

成瀬役の平間、そして大橋役の戸谷をはじめとする若手陣は、若さの輝きを象徴するように出撃の日まで悩み、ぶつかり続ける。そして軍隊生活の厳しさと不条理を、手堅い演技で表現してみせる向野と土屋。さらに娘を思い、死を運命づけられた成瀬に残酷な言葉を伝える高部役、久ヶ沢の存在感は唯一無二。要所要所では軽やかに笑いも取ってみせる。さゆり役の小松は、唯一の女性キャストとして「残された者」の決意と希望を体現。そして久ヶ沢と小松が表現する親子の情愛は、時代を超えた普遍のものとしてこの作品を貫き、観る者の胸に響く。

あの時代を生きた人々が抱く思いを、丁寧に表現しているからこそ、出撃直前、親しい人たちに最後の言葉を残す、特攻隊員たちのシーンには、声高ではない静かな悲しみが溢れている。そして成瀬が託したたすきは、再び次代へとつながっていく。

4月15日(月)まで東京・紀伊國屋ホールで上演。チケットは発売中。

取材・文:小杉 厚

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