マリオン・コティヤール

仏女優のマリオン・コティヤールが主演最新作『君と歩く世界』で、不慮の事故で両足を失うヒロインを熱演している。絶望の淵から這い上がる姿を、身体的規制のもとで演じ切るキャリア最大の“難役”。それでも彼女は「シナリオを読んだ段階で、ヒロインに恋をしてしまった。演じたことのないタイプの役柄だったし、だからこそ強く惹かれた」といい、「これほど強い存在感を放つ女性を演じることができて、世界で最も幸せな女優だと思うわ」と誇らしげに語る。

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映画はショーの最中に起こった事故が原因で、両脚を失くしたシャチの調教師・ステファニー(コティヤール)が、愛情を素直に表現できない不器用な男性と出逢い、生きる喜びを取り戻していく姿を描いたヒューマンドラマだ。

コティヤールは本作プロモーションのために6年ぶりに来日。インタビューには、メガホンを執ったセザール賞の常連ジャック・オディアール監督(『真夜中のピアニスト』『予言者』)が同席し「監督が一緒になって、ステファニーに命を吹き込んでくれた。とても特別なラブストーリーなので、“体感”してほしい」(コティヤール)、「演じられるのはマリオンしかしないからね。直接自宅に行き、彼女の手を取りオファーをしたんだ」(オディアール監督)と念願の初タッグで、すっかり意気投合している様子。

ヒロインにたちまち惚れ込んだコティヤールだが「彼女のことを本当には理解できなかった」とも打ち明ける。「よく『自分に近い役柄のほうが演じやすいのでは?』と聞かれることもあるけど、私自身は自分に遠ければ遠いほど、(役柄に)近づく過程を楽しみたいタイプ。あえて、自分との共通点を探したりはしないの。今でもステファニーに関しては、いくつか謎も残っているし」と(コティヤール)。

『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』で第80回アカデミー賞主演女優賞を受賞。フランス人女優として史上2人目、49年ぶりの快挙を成し遂げ、近年では『ミッドナイト・イン・パリ』やクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』、『ダークナイト ライジング』など活躍の場を世界に広げている。「私にとって、ハリウッド作品への出演はある種のアドベンチャーであり、アバンチュール。映画の中に自分の居場所があると実感できるなら、フランス映画も、ハリウッドの超大作も垣根なく出演していきたい」という。

『君と歩く世界』
公開中

取材・文・写真:内田涼