左から、倉持裕、鵜山仁、白井晃、野村萬斎 左から、倉持裕、鵜山仁、白井晃、野村萬斎

東京・世田谷区の公共劇場、世田谷パブリックシアターの2013年度の劇場プログラムに関する発表会が4月8日に行われ、芸術監督の野村萬斎と、主催公演を担当する白井晃、鵜山仁、倉持裕が顔を揃えた。

白井晃演出『オセロ』チケット情報

2期10年芸術監督を務め、今年度3期目に入る野村萬斎は「民間とは違い、失敗するかもしれないリスクをあえて犯しながらも、実験的に尖っていけるのがこの劇場らしいところ。(出席の)3人の演出家にも、尖った作品作りをしていただきたい。その作品が日本各地をまわり、やがて世界に出て行くことができれば」と意気込みを語りながら、今年度ラインナップを紹介した。

6月は仲村トオル主演、白井晃演出で『オセロ』を上演。白井は「シェイクスピアは、劇団時代に部分的にアレンジしたりしたことはあったが、ストレートにやるのは、今回が初めて。シェイクスピアの四大悲劇と言われる作品の中で、この『オセロ』だけは、亡霊も魔女の出てこない人間の嫉妬に関する卑近な話ではないかと考えた。あくまで福田恒存訳の格調高い言葉はそのままに、現代の俳優たちがその言葉と格闘しながら、卑近な物語として捉え直すことができたら」。

9月はジョージ・バーナード・ショーの名作『ジャンヌ』を笹本玲奈主演、鵜山仁の演出で。鵜山は今回が同劇場主催公演初登場。「ジャンヌは百年戦争のオルレアンの攻防戦で名を上げた、フランスをフランスたらしめた人。いわば、世界の中で新しい枠組みを意識させたヒロイン。その新しい価値観は現実の利害や既得の欲望と衝突する。今回『ジャンヌ』を広く深く発信することで、私自身エネルギーを更新したい。主演の笹本さんは田舎娘のようでもあり、輝かしいヒロインでもある方。そんな彼女を旧弊な男たちが食い物にする、刺激的なパフォーマンスになるのでは」。

2014年1・2月にはシリーズ企画「近代能楽集Ⅶ」を上演。倉持裕が2010年以来2度目の参加、今回は作、演出を手がける。「何百年間にもわたって生き残ってきた普遍的な謡曲をアレンジして、現代演劇にするという企画は作家としても、演出家としても大変勉強になった。今回は能「葵上」狂言「花子」能「班女」の3本をオムニバス形式で。テーマは、男と女。男女関係から生まれる人間の情念が描かれている謡曲を選んだ。3本を通して狂気とエロスが混在する世界になればいいなと思っている」。

2014年3月には、野村萬斎演出で川村毅書下ろし『神なき国の騎士』(仮題)-「ドン・キホーテ」より-を上演。「理想に燃える、ちょっとイカれているかもしれない男と従者サンチョの珍道中を虚実入り交えながら描く。ドタバタ的だが哲学的、人生は悲劇か喜劇か? そんな舞台をお見せできるのでは」と話した。

このほか、2008年に同劇場で初演、数々の演劇賞に輝いた『春琴』を初演と同じく深津絵里の主演で上演することも発表に。今夏NYリンカーンセンター・フェスティバルに正式招待も決定しており、帰国後の8月に上演。