「肇さん...」と電柱で「朝陽の中で微笑んで」のポーズ

もちろんです!

自分のモットーは「毎公演、新鮮に違うものをみせる」こと。それは『王家の紋章』のときから、今も継続できていると思っています。だから、毎回悔いはないです。

毎回100パーセントの力で、その役になって生きている感覚になれています。

役をやっていることに対して「慣れたくない」と、ずっと思っているんです。

寺さんと、お稽古のときにふたりで話したことがあって。泣く芝居を求められているわけじゃないけど、お芝居を通してやったら、ふとしたときに突然、涙が流れてきちゃう瞬間があるんです。

でも、「これを毎回、何十公演もずっとできるのかな」って、寺さんに話したんです。そうしたら、

「役をやるのは、寺脇康文と宮澤佐江だけど、この話の登場人物の鳴沢肇と北岡紗良は、この後どういう会話があって、どういう結末が待ってるかを知らないわけでしょ? だから、板の上に立ってみての生き方でいいんじゃないかな? 」

って。それを意識するだけで、今日演じるものと、明日演じるものは確かに違ってくるなと思ったんです。だって、鳴沢肇と紗良は、本人たちもこの先どうなっていくのかは、分からないんだから。

寺さんと、「今回はそれを一番に意識しましょうね」って、言っています。涙が出るシーンでも、昨日はここの感情はすらっと言えたけど、その後で涙が溢れちゃった。でも今日はここの感情で胸が詰まって言えなかった、とか。

やっぱりその日によって違うんです。だから毎日新鮮なんです。

観ている人にもそう思ってもらいたいな、と思っています。

でも、よかった。私の中では『王家の紋章』のときから、「毎回新鮮な気持ちで舞台に立ちたい」と思っていて、それを自然と意識して行動もしていたから。

固めた芝居じゃないものを、ステージ上で出すやり方が、宮澤佐江にはぴったりなやり方なんだ、って今回改めて感じることができています。

ーーそうしたことも、前半で話の出た「リアリティ」ということにつながるのかな、と思いました。

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