『青空の卵』
坂木 司(著)
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『青空の卵』著:坂木司(東京創元社)

物語のあらすじは、「僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著書デビュー作」といった、日常系のミステリーを描いたひきこもり探偵シリーズの第一弾です。

主人公の坂木は、外資系の保険会社に勤めているサラリーマンで、ひきこもりの親友のために日々面倒を見ている、非常に温和な性格の持ち主。かたや、親友の鳥井は自称ひきこもりで大の外出嫌い、自宅でプログラマーの仕事をしている名探偵です。その名の通り、ミステリーに分類される本書ですが、この作品の最も注目すべきところは、そんな坂木と鳥井との“友情関係”にあります。

たとえば、二巻の『子羊の巣』の冒頭シーン。鳥井が風邪を引いてしまって、坂木がなんとか病院に連れ出そうとしますが、鳥井が「行きたくない!」「医者は信用してねぇ……」と駄々をこねている描写があります。

 子供のように布団の中にもぐり込んだ鳥井は、僕の顔を隙間から、ちらちらとうかがう。その姿が巣穴の中の動物のようで、ちょっと可愛くもある。
「医者は信用しなくてもいいよ。でも、僕のことは信用してほしいな」
「いや、でも……」
 必死に最後の抵抗を試みようとする彼に、僕は最後の一言を突きつける。
「僕のことが信用できない?」
 うらめしそうな目で、鳥井が僕を見つめた。
「できなく、ない……」

どうですか?本人たちはいたって真面目にやっていることでも、腐女子の目から見てみると、ついニヤニヤしてしまいますよね。このように本作では、坂木が“友達として”鳥井を思いやる感情が、あたかもBLとして捉えられてしまう描写がたくさん含まれています。気になる方は、ぜひこの機会にチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

『きみはポラリス』
三浦 しをん(著)
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『きみはポラリス』著:三浦しをん(新潮社)

物語のあらすじは、「これって恋or愛?いえ、これこそ恋愛そのもの。世間の注文も、原稿の注文も『恋愛』のことばかり。なら、とことん書いてみようじゃないの!ということで生まれたただならぬ『恋愛短編集』。初恋、禁忌、純愛、結婚、信仰、偏愛、同性愛……。本気で恋し、だれかを愛したいなら読むしかない!われわれの時代の聖典」といった、11の『恋愛』の形を描いた短編集。

こちらはBLの匂いがするというよりも、リアルに男同士の恋愛(=同性愛)をテーマに扱った作品になります。なかでも、「永遠に完成しない二通の手紙」と「永遠につづく手紙の最初の一文」の二編は、友人に片思い中の男性の心情をコミカルに、ときにセンシティブに表現されています。

登場するキャラクターは、底抜けに明るい性格の寺島良介と、勉強も運動もそつなくこなす岡田勘太郎のふたり組。小学3年生のときに、寺島が母親と引っ越してきて以来、現在の大学生になった今でも行動を共にする、仲のよい間柄です。しかし、いつしか岡田はそんな寺島のことを気にかけるようになり、彼が好きな女の子に手紙を書いているときも、ひとり悶々と気持ちをさらけ出すことができずにいます。

 寺島の髪の毛の先に、小さな煙草の灰がついていた。消えやすい雪に対するように慎重に、指でそっと払ってやった。
 寺島。俺の手紙は、永遠に投函されることはないんだ。
 それは俺の心のなかで、ひそかに、囁くように、つづられていくだけなんだ。

専門のBL小説のように、ハッキリと“ふたりが恋に落ちる瞬間や“性描写シーン”が描かれているわけではないので、BL初心者の方にはとても入りやすい話だと思います。もちろん、腐女子のみなさんにとっても、たまにはファンタジーと割り切ったBLではなく、リアルな同性愛ものに手を出してみてもいいのではないでしょうか。
 

BL初心者にはうってつけの入門書!

どの作品も“BLから見た視点”を除いたところで、面白い作品ばかりです。「最近、BLに興味を持ち始めたけど、なにを読んでいいのか分からない」といった方から、「BLってなに?」といった初心者の方まで、幅広く楽しんでいただけること間違いなしの3点です。ぜひ書店でお見かけの際は手にとってみて、活字ならではの世界に酔いしれてみてくださいね。
 

フリーランスライター。女性向けWeb媒体を中心に、恋愛、結婚、仕事、ライフスタイルに関する記事を執筆。自分の身と心で感じたことを企画立案し、記事にしながら読者に役立つ情報を発信している。自身の「note」に活動実績一覧を掲載中。介護福祉士、保育士資格保有。