第2の本命『テラフォーマーズ』

『テラフォーマーズ』
橘 賢一(著)、貴家 悠(原著)
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まだメディアミックスされていない“侵略モノ”作品では一番の注目株。『進撃の巨人』に遅れること2年、同じ『このマンガがすごい!』の2013年版でオトコ編1位に輝いた。

ファンタジー要素が強かった『進撃の巨人』に対し、こちらは600年後の地球と火星を舞台にしたSFアクション。科学の発展した人類は、生活圏を広げるために火星の地球化(テラフォーミング)に着手した。火星へ送り込まれたのは、大気中に酸素を作り出すための苔、そして本作最大のキモとなる生物――ゴキブリである。ゴキブリの黒い体表で太陽光を吸収し、火星の気温を上昇させる。その後に人間を派遣し、増えたゴキブリをすべて駆除すればテラフォーミング完了……となるはずだった。

だが、後に火星へ送り込まれた駆除班が見たのは2足歩行し、知性を身につけるまで進化したゴキブリ(テラフォーマー)だった。昆虫としてのパワーや生命力はそのまま、集団で襲いかかる敵たちによって人間側が“駆除”されていく凄惨な光景は圧巻。どうにか駆除班の一部が地球へ生還し、ゴキブリ=テラフォーマーとの長い戦いが幕を開ける。これほどボリュームの詰まったスリリングな物語が、わずかコミックス1巻の中で展開される。

そんなにゴキブリが手強いなら火星を放棄すればいいじゃん、とはいかない。火星由来のウイルスが持ち込まれ、地球にも死の病が広がってしまっているためだ。結局、人類は病気の治療薬を作るために探索チームを編成し、また火星に向かうこととなる。その2巻以降も絶望につぐ絶望。火星へ向かう宇宙船内でテラフォーマーに襲われたり、人類側に黒幕がいるらしかったり、一瞬たりとも目が離せない。

さて、本作もう1つの特徴は、極悪なテラフォーマーに対する人類側の戦い方だ。生身では到底かなわない、かといって強力な銃火器では相手に奪われた時に大変。というわけで高度な科学力の出番となる。人間に特殊な手術をほどこすことで“昆虫の能力”を手に入れ、テラフォーマーに対抗しようというのだ。これにより腕力や機動力が飛躍的にアップし、テラフォーマーたちとも肉弾戦がやれるようになる。こうしたトンデモ科学+正統派SF+ド派手なバトルアクションの融合が『テラフォーマーズ』最大の魅力と言っていいかもしれない。

ストーリーも作画力もすばらしく、小説化・アニメ化・実写映画化とどんなメディアミックスにも好適な逸品。おそらく遠くない時期に、なにかしらの新しい展開が発表される可能性は高いだろう。Youtubeで公開されている公式PVを見る限り、ヤングジャンプ編集部もプロモーションに相当力を入れているようだ。