左から、岩松了、大森南朋  撮影:源 賀津己 左から、岩松了、大森南朋  撮影:源 賀津己

岩松了の新作舞台は、文豪・川端康成の異色作『みずうみ』にインスパイアされた『不道徳教室』。ある高校教師が、教え子の女生徒をストーカーするという衝撃の内容で、その高校教師・山城一也を大森南朋が演じる。

舞台『不道徳教室』チケット情報

大森が岩松作品に参加するのは、今回で3度目。だが岩松は大森について「白紙状態に近い」と切り出し、「僕の中でまだ確定していないというのかな。『これだったら大森南朋だろう』っていうのがない。その揺れている感じがいい」と大森を評する。「それが今回、ストーカーで確定するんですね」と笑うのは大森。「一番近しい演出家の大先輩」と岩松に絶対的な信頼を寄せる大森は、ストーカーという自らの役どころについても、「だって面白そうじゃないですか。人を好きになれば近づきたくもなるでしょうし、その気持ちは分からなくもない。それが突き抜けてしまった、そういった性質の人間を演じること自体、すごく楽しみです」と期待をにじませる。

ストーカーされる側の女生徒・須佐あかねを演じるのは、今春高校を卒業したばかりの二階堂ふみ。チラシ撮影時が初対面だったという大森は、真っすぐ相手の目を見る二階堂が印象的だったと振り返り、「それだけいろんなことを観察しているってことなんでしょう。今目の前にあるものを、どんどん吸収しようとしている。そんな今をときめく二階堂さんをストーカーするわけですから、絶対に面白くなります」。

さらに言えば、“大森南朋が”二階堂ふみをストーカーするという面白さでもある。それは岩松の意図するところでもあり、「やっぱり被害者が加害者に興味を抱かないと、関係が始まらない気がするんですよね。そこで大森くんみたいなモテそうな人がストーカーをする、その面白さ。しかも元恋人でもない、何も始まっていない相手をつけて行くわけで、そこには何か意味深いものがあると思うんです」。

昨年のストーカー被害数は、過去最多と報じられた。そこに岩松は、川端康成の時代から続く“普遍性”を感じつつ、本作では「一般的にストーカーというものに抱かれている印象を、もうちょっと幅の広い解釈にしたい」と明かす。さらに「ストーカー行為ってものが、愛とか憎しみとか、人が生きていく上でのどういう化身なのか。この作品から探っていきたい」とも。岩松の目と、大森の体を通し、そこにどんな答えが導き出されるのか。劇場で確かめたい。

公演は5月29日(水)から6月4日(火)まで神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ、6月8日(土)から23日(日)まで東京・シアタートラムにて。チケット発売中。

取材・文:野上瑠美子

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