ナイフを入れた瞬間、肉汁があふれ出た、北海道は紋別のハンバーグ。
濃厚な脂が印象的だった、小豆島で食べたオリーブ牛のハンバーグ。
自称ハンバーグ王子は、全国各地で個性豊かなハンバーグと出会ってきた(と思う)。

ところが、この日、目の前に置かれたハンバーグはかつて経験したことのない、異次元な料理だった。その名も「飲めるハンバーグ」という。

この料理は11月29日にオープンした「飲めるハンバーグ 高田馬場店」の看板メニューだ。

食べるではなく、飲む? ハンバーグのスムージーなのだろうか? さっそく理解不能、意味不明な飲めるハンバーグをオーダーした。

待つこと5分。熱した鉄板の上で、ジュウジュウと音を立ててながら飲めるハンバーグが登場した。

やや厚みのある、おやきのような形状。形こそユニークだが、見た目にはほとんど特徴を感じなかった。

ところが、である。箸でハンバーグを切った瞬間、見たことのない断面を目の当たりした。

ひき肉で作るハンバーグは、大なり小なり肉のつぶつぶがある。なのに飲めるハンバーグの断面は、まるですりおろした山芋のようだった。肉のつぶつぶ感がまったくないのだ。

賞味してみると、とろとろで、まったりとした喉ごし。粘度の強い〈クリーム〉のような食感、とでも言いましょうか。
すりおろした山芋のように、ハンバーグが、喉につるんと流れてくるのであります。

これにソースをかけて食す。ソースはオニオンステーキソース、トマトソース、和風おろしポン酢など6種類。この中から一番人気のデミグラスソースを選んだ。
デミグラスソースをかけた瞬間、さらに旨そうな音が響き始めた。

このソースがかなり濃厚。
これをご飯にかけたら絶対旨いに違いない。そう思い、別注文のご飯を頼んだ。

肉汁とソースをご飯にかける。下品極まりない食べ方だが、これが滅法旨い。大正解。だってこれほど旨みが凝縮したソースと肉汁を残すのはもったいないではありませんか。
自称ハンバーグ王子も、この食べ方は初体験。

この店は国産黒毛和牛の焼肉を供する「将泰庵グループ」(本社千葉県船橋)が運営している。
飲めるハンバーグを考案したのは、木原徹社長だ。

国産黒毛和牛を一頭を仕入れるとスネ、ネックなど、商品として出せない部位が出る。この貴重な国産黒毛和牛を余すことなく使い切るにはどうすればいいか。

焼肉店やステーキハウスなど、多くの店が肉を掃除した際に出る端材を使ったハンバーグをメニュー化している。木原社長は他店と差別化する意味もあり、「ハンバーグっぽくないハンバーグを作ろう」と思い、試行錯誤を繰り返した。

その結果、誕生したのが、飲めるハンバーグだった。

粗挽きではなく、肉の形状がなくなるまで二度びきすることにしたのだ。