AIを搭載した三菱のエアコン「霧ヶ峰」

エアコンのセンサ陣営に分類される三菱のルームエアコン「霧ヶ峰FZシリーズ」と「Zシリーズ」は、従来から搭載していた赤外線センサ技術「ムーブアイ」にAI(人工知能)技術を加えた。その名も「ムーブアイmirA.I.(ミライ)」。人が寒さや暑さを感じる前にエアコンが察して、室内温度を快適にコントロールする。

名刺半分サイズまでセンシング

「われわれは部屋を暖めたり冷やしたりする発想ではなく、人を快適にさせたいという発想でエアコンをつくっている。そのキーデバイスが、1994年から搭載しているセンサだ」と、営業部の原田進ルームエアコン販売企画グループマネージャーは、照準を「人」に合わせて開発してきた経緯について説明する。

昨年発売したモデルでは、1万8000の解像度を持つ「ムーブアイ極(きわみ)」を搭載するまでにセンサ技術を進化。「名刺半分のサイズまで温度を検知できるので、人の手先の温度変化が把握できる」と、部屋にいる人の手先の温度検知がポイントであると解説する。

人間は寒くなると、手先や足先から冷える。なぜかといえば、心臓をはじめとする臓器などを守るために、生理的に身体の中心に血液を集めるからだ。手先の温度変化を検知できれば、人が寒く感じているのか、暑く感じているのかを見分けられるというわけだ。

「ムーブアイmirA.I.」ではさらに踏み込み、360°センシングしながら運転中に人が感じる寒さや暑さを予測する「先読み運転」を実現させた。エアコン運転中に、部屋の温度が変わったと感じて、リモコンで設定温度を変える体験はだれにでもあるだろう。その動作が不要になると説明したほうが、分かりやすいかもしれない。

そもそも一定の温度で運転していても不快に感じるのは、日照時間の変化や人の入退室などによって室内の温度は少しずつ変化するからだ。 「エアコンと人の温度の感じ方にタイムラグが生じる『後追い運転』は(霧ヶ峰の初号機発売から)50年間変わらなかった。ムーブアイmirA.I.の『先読み運転』は、その発想を覆した新しい技術だ」と原田マネージャーは力説する。

「先読み運転」を実現する3つの要素

「先読み運転」を可能にする要素は3つ。人が寒さや暑さを感じる「体感温度」と屋外の温度変化を示す「外気温」、そして室温に影響を及ぼす「住宅性能」だ。最後の「住宅性能」の検知が最も大切だという。

「ムーブアイmirA.I.」は、ある熱量を出したときに、その部屋がどのくらいのスピードで暖まったり冷えるたりするのかを学習していく。住宅では窓や壁の断熱性能表示など、住宅性能を示す指標があるが、「ムーブアイmirA.I.」はそれに従っているわけでない。季節や地域、マンションの最上階と中間階、古い住宅や新しい住宅など、個別の住宅ごとに異なる室内温度の変化を学習していくのだ。

最後に、この冬の争点のひとつである清潔性にも触れよう。三菱は、特許技術である左右の風向プラップを開いて通風路の奥まできれいに手入れできる「はずせるボディ」を訴求する。

Zシリーズでは、新たに「フィルターおそうじメカ」を取り外せるようにした。熱交換器が露出するので、掃除機などでしっかりと掃除できる。通常のエアコンでは奥に格納されていて見えづらい熱交換機を、よく見られるようにしたことで、きれい好きにはたまらない仕組みになっている。

本連載の第5弾は、東芝のエアコン「大清快」に迫る。(BCN・細田 立圭志)

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