撮影:稲澤朝博

「うわー、アシュラクロック!」
「福間さん!!」

初日の20時30分頃から、タイムラインがこのような声でいっぱいになった。言うまでもなく、平沢による明確なアナウンスもなければ、どのような意図で選曲したかも触れられていない。

オーディエンスはコロナ対策で装着しているマスクの中へ、伝った涙がたまって仕方がないというのに、ステージ上の平沢は表情ひとつ変えずに朗々と、気高く、艶に満ちた声で歌い続ける。「あなたたちが、自身の意識によってそれぞれの答えを導くことができたら、それでいいんです」とばかりに。

エモーショナルな部分と、いい意味での突き放しが混然となった空間。そのギャップが、どうしようもなくたまらなかった――。

撮影:稲澤朝博

コロナの影響によって、すべてのエンターテインメントはその在り方について模索することを余儀なくされた。距離が近い=悪のように見られるこの時代だからこそ、人は物理的よりも精神的なつながりに拠りどころを求める。

インタラクティブ・ライブが長きに渡り模索してきたことと、時代性がリンクしたこのタイミングで聴く平沢の声は、ライブ会場ではなく自宅やパソコン、スマホといった個の空間だからこそより響く気がする(イヤホン奨励)。3公演分の連続性を楽しむもよし、ライブでは止まらず流れていく映像&文字情報も、アーカイブ配信ならば繰り返し見て確認できる。

聴くだけの音楽から、思考のためのライブへ――地球に生まれし者は、平沢進を体感する義務がある。

アーカイブ配信 情報

4月2日(土)22:00までチケット発売中!

平沢進『INTERACTIVE LIVE SHOW 2022「ZCON」』
【アーカイブ配信】4月2日(土)23:59まで

プロレス専門誌『週刊プロレス』編集次長&同モバイル編集長を務め、09年にフリーとなり音楽、演劇等についても執筆。『プロレス きょうは何の日?』(河出書房新社)、ムード歌謡グループ・純烈のノンフィクション『白と黒とハッピー~純烈物語』(扶桑社)を発刊。よく聴く音楽はYMO、TM NETWORK、BOOM BOOM SATELLITES、POLYSICSほか。解凍P-MODEL時代から平沢進を追い続けている。

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