写真中央がトニー・レオン演じるイップ・マン。その隣にいる少年は……(C) 2013 Block 2 Pictures Inc. All rights reserved.

トニー・レオン、チャン・ツィイーが出演する大作映画『グランド・マスター』を手がけたウォン・カーウァイ監督の最新コメントが届いた。独自の語り口と映像美で世界で高い評価を集めているカーウァイはなぜ、武術の達人たちのドラマを描こうとしたのだろうか?

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1930年代の中国では武術に様々な流派があり、それぞれの流派を極めたものを“グランドマスター”と呼んでいた。映画は、後にブルース・リーの師匠になったイップ・マン(レオン)や、殺された父の復讐を誓い武術に人生を捧げたゴン・ルオメイ(ツィイー)ら“グランドマスター”たちが、世界大戦などの波に翻弄されながら、己の道を極めようとする姿を描いている。

独自の映像美で登場人物たちの心の揺れを精緻に描きだしていくカーウァイ監督が、武術映画に興味を抱いたのは1996年のこと。『ブエノスアイレス』を撮影していた彼は、ブルース・リーが雑誌の表紙になっているのを発見し、リーの映画を撮ることを構想する。しかし、カーウァイ監督は様々な調査を続ける中でリーよりも彼の師匠イップ・マンに魅了され、「色々調べていくうちに武術家だけではなく、武術に関する“精神”というものを表現したくなった」という。その後も別の作品を手がけながらリサーチと脚本作りを進めてきた監督はついに本作に着手。しかし撮影には3年もの月日を要した。「時間がかかってしまいましたが、昨年が中華民国100周年だったので、このタイミングで撮りたかったんです」。

本作は華麗なアクションがふんだんに登場するが、映画で描かれるのはあくまでも己の道を極めようと苦しみ、時代の流れに抗いきれずにいる人々の“心の機微”だ。「最初はイップ・マンだけを描こうと思っていたため英語のタイトルは“GRANDMASTER”でした。その後に複数の武術家を描くことにしたので“GRANDMASTERS”に変更し、映画が完成して上映する前に再び“GRANDMASTER”にしました。確かに複数の武術家たちを描いていますが、この映画は“武術家たちの精神”というものを表現しているからです」。

異国の地でブルース・リーの写真を発見してから17年。これまで長期にわたるプロジェクトを数多く手がけてきたカーウァイ監督だが『グランド・マスター』は最も想い入れが強く、最も長い時間と労力、アイデアを投じた作品になっている。

『グランド・マスター』
5月31日(金)よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー