ニコライ・ホジャイノフ  撮影:吉田タカユキ ニコライ・ホジャイノフ  撮影:吉田タカユキ

ソロ・リサイタルや室内楽で頻繁に来日公演を行っているピアニストのニコライ・ホジャイノフ。2018年1月のワルシャワ・フィルとの共演で再び日本の地を踏む。

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「ワルシャワ・フィルとは何度も共演していますが、何と言っても一番強烈だったのはショパン国際ピアノコンクール(2010年)のファイナルです。演奏の途中に電気が消えてしまって…あのような経験は初めてでした(笑)。しかし、指揮者とオーケストラと非常にいい関係が築けていましたから、あのアクシデントは何の妨げにもなりませんでした。1月に共演する指揮者のヤツェク・カスプシック氏とは初共演になりますが、サンクトペテルブルクでの白夜祭でマリインスキー歌劇場管弦楽団の指揮をされている映像を見て非常に感銘を受けました。ルトスワフスキの協奏曲でしたが、音楽をとても生き生きと活気づかせていたのです」

忘れ難いコンクールのファイナルでワルシャワ・フィルと弾いたショパンの『ピアノ協奏曲第1番』を再び演奏する。「ショパンのコンチェルトは今でも1番、2番とも頻繁に演奏しますし、そのたびに新しい発見があります。偉大な音楽ですから、イントネーションにしてもフレーズにしても、つねに新鮮なものが見つかるのです」

語学も達者で、YouTubeでの日本語でのトークが毎回話題になっているホジャイノフ。その国の文化と言語は、音楽とも密接に関係していると語る。

「ある作曲家の作品を演奏するときは、必ずその時代や文化について学びます。どのような背景があってその作品が生まれたのか…その国の文化を知る必要があります。そして文化が一番反映されているのが言語です。日本の作曲家を演奏するときは、もっと日本語を学ぶことになるでしょうね。なぜ日本でこれだけショパンが人気なのかは…『平家物語』に端を発しているのではないかと思います。武士は切腹をする前に「辞世の句」を読みますが、あれほど激しい行為の前に詩を読むというのは、日本人の両極端の性格を感じます。ショパンにもそうした極端な要素がありますし、日本人が非常に高い美意識を持っているように、ショパンも高い美意識を持っている。ショパンのセンシティヴなまでに心に染み入る美が、日本人の感性に合うのでしょう」

絵画にも詳しいホジャイノフは、彼の教師であるアリエ・バルディに招かれて、テルアビブのテレビでムソルグスキーの肖像と彼の音楽について語ることもあるという。

「作家と音楽家、詩人と画家と作曲家はかつて、みんな同じ場所に集まって芸術について語っていました。音楽を掘り下げていこうとすると自然と他の芸術に関心を持つようになるのではないかと思います」

言語と詩と絵画と音楽…ホジャイノフの頭の中には膨大な美のイディオムが蓄えられている。1月のコンチェルトでも聴衆を啓発してくれそうだ。

公演は東京・サントリーホール 大ホールにて、1月15日(月) 19:00開演。チケット発売中。

取材・文 小田島久恵