TVアニメ「メイドインアビス」 オリジナルサウンドトラック

2017年の夏アニメで、アニメファンの話題を集めた作品が『メイドインアビス』です。

本作を彩るサウンドトラックを作り上げたのは、オーストラリア出身のケビン・ペンキン。多国籍なクリエイターを擁する音楽制作集団「IRMA LA DOUCE」に籍を置く、才気ある若手作曲家です。

本作の劇伴は、オーストリアのウィーンでレコーディングを行っており、そのスケール感と、シンセイサイザーとオーケストラ楽器を融合させたサウンドは、本作の大きな特徴となっています。

CD2枚組、全52曲と大ボリュームの作品ですので、収録曲のリズムやメロディは多岐に渡っており、作品全体の印象を一言でまとめるのは少々強引な気もするのですが、それでも敢えて書かせていただくと、全曲を通しで聴いてみた時に強く感じたのは、各楽曲を貫くテクノ的なミニマリズムの美しさでした。

反復されるビートやリフレインされるメロディ。それらが、幻想的であり、どこか神秘的な要素を感じさせる世界観を構築している。

ずっと聴いていると、自身の内面世界にダイブしてしまいそうになる催眠的な"深み"を聴き手に与える『To the Abyss!』や、リフレインされる鍵盤の音がエモーショナルな『Remembering Home』といった楽曲の数々は、本作のそうしたミニマルな側面を強く体現しているように思います。

一方で、変則的なビートが脅迫観念のように聴覚に迫りくる『Maul』、エキゾチックなリズムとダークな低音が不穏な空気を醸し出す『Tasukete』、或いは、ノイジーなインダストリアルテクノを連想させる『Crucifixion』のように、ハードコアなサウンドも収録されており、要所要所で起伏を付けるアルバム構成も思わず唸らされるポイントです。

オーケストラの人間味のある音色とメロディ、リズム共にハイクオリティなテクノサウンドが高次元で結合した大変素晴らしいサウンドトラックだと思います。個人的には、テクノやエレクトロニカといった電子音楽の他にも、ジャーマンプログレのような反復ビートが特徴のロック・ミュージックに近しいエッセンスを感じました。

完成度が高すぎるのと、音の密度がとてつもなく濃いので、アニメ本編と同様に通しで聴くとかなりの体力を消耗しますが、その中で"癒やし"となる『Underground River』と『Hanezeve Caradhina』という2つのヴォーカル曲の存在も本作における大きな魅力です。

BORUTO -ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS オリジナルサウンドトラック I

今年、放映を開始した『BORUTO -ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』は、『週刊少年ジャンプ』で連載されていた人気漫画『NARUTO -ナルト-』の続編にあたる作品。

劇中の音楽は、シリーズのファンにはお馴染みの高梨康治さん率いる音楽ユニット「刃-yaiba-」が担当しています。

同ユニットは、ハードロックを基調にしたバンドサウンドに、尺八や三味線などの和楽器を融合させた音作りが特徴で、そのハードかつ「和」の優美を感じさせる音楽性は今作でも健在。高梨サウンドらしい一本筋の通った力強い音を聴かせてくれます。

特に、アニメサントラのメイン曲としては珍しくヴォーカルと歌詞が入っているファーストトラック『風になれ』のストレートで太く、なおかつキャッチーなメロディは堪りません!

目を引くのは『風になれ』を筆頭とする"ロック"なトラックの数々ですが、その裏で、ストリングスの美しい音色で構築されたスロー、ミドルテンポな楽曲の数々もシッカリとした存在感を放っており、これらの楽曲が一枚のアルバムにパッケージされた際の緩急が生み出す構成美にもご注目ください。

アップテンポなトラックは、熱く激しくラウドに、そして、穏やかな楽曲では、どこまでも情緒的な音を作り出す。楽曲によって、コントラストがハッキリとしているからこそ、一つ一つのトラックがより鮮明に印象に残り、それらがまとまった際のサントラとしての完成度をより高めているように感じました。

歌モノで始まり、同曲のインスト版で締める構成も見事で、"アルバム"としてパッケージすることに強く必然性を感じられる一枚だと思います。

個人的には、本年度の"ロック"なアニメサントラとしてイチ推しをしたい作品です。漢字の割合が高めなトラック名の数々も、雰囲気タップリで素晴らしい。