『新釈 金色夜叉』の出演者 『新釈 金色夜叉』の出演者

新派百二十五年六月新派公演『新釈 金色夜叉』の開幕に向け、5月8日、都内で記者懇親会が行われ、出演者の水谷八重子、波乃久里子、英太郎、風間杜夫がそれぞれの抱負を語った。

原作は、1887年から1902年にかけて新聞に連載され、空前の人気を博した尾崎紅葉の小説『金色夜叉』。作者の死により未完となった後も、数多くの舞台や映画、テレビドラマで取り上げられてきた。『新釈~』は、劇作家・宮本研が1981年に文学座に書き下ろしたもので、新派では1983年に続いて今回が2度目の上演となる。

幼い頃から兄妹のようにして育ち、結婚を約束していた貫一と宮だったが、宮は富豪からの求婚を断り切れず、貫一の逆鱗に触れてしまう。それならば自分も非人間になろうと高利貸の道を選んだ貫一と、結婚生活から幸せを得られず悲嘆に暮れる宮。物語は、ふたりの悲恋を軸に、経済に翻弄されざるを得ない近代社会の暗部を浮き彫りにしていく。30年前と同じく高利貸しの赤樫満枝を水谷、宮を波乃、老女を英が演じ、貫一役には新たに5度目の新派公演参加となる風間を迎える。

「前回のことはほとんど覚えていないで、あまりのセリフの分量の多さにびっくりしています。これを楽しく面白く聴いていただかないといけない。どうなりますことやら。スリルとサスペンスでございます」(水谷)

「風間さんとまた共演できるのがうれしい。“最初は青年部で今では幹部”と本人もおっしゃってましたが、すっかり大幹部になられました。宮は、ひとつ飛んでみたい、という女。お金のためでも、不実だったわけでもないと思います。中身は現代の女として演じられれば」(波乃)

「芝居のやりとりをするのは風間さんとだけ。あとは空気のように流れてまいります。前回は若かったので、老女なんてと思いましたけど、役を作っていく楽しさがあって、結局、宮本先生に老女のひとり芝居を書いていただくことにもなりました。すごく思い出深い作品です」(英)

「“今月今夜のこの月を俺の涙で曇らせて見せるぞ”という名セリフをいかに照れずにやれるか。巷でこのセリフが流行って社会現象になればいいというぐらいの気持ちでやります。これまで出演していて感じたのは、新派は“和製ミュージカル”だということ。まず型から入って、そこに気持ちが入ってくる。伝承すべきひとつのスタイルが新派にはあると思います」(風間)

公演は、東京・三越劇場にて6月3日(月)から23日(日)まで。チケット発売中。