――もうひとつ……伝統、というワケではありませんが。女優もしている佐江ちゃんにとっては、俳優の高仓健(高倉健)さんは外せませんよ。

健さん?

――はい、健さんです。佐江ちゃん世代からすると、ひょっとすると上のイメージになってしまうかもしれませんが(笑)高倉健さんは日本芸能界に数々の伝説を残しているのと同様、いやそれ以上に、中国では“伝説的な存在”なのです。

どういうこと?

――世界三大映画祭で3度の最優秀作品賞に輝いている(※1)世界的映画監督・张艺谋(張芸謀=チャン・イーモウ)監督も、高倉健さんのことを「神様のような存在」で「中国映画人にとって憧れの人物」とおっしゃっています。

――監督が言うには「10億人以上の中国人が、高倉健さん主演の映画『君よ憤怒の河を渉れ』(中題:追捕)を観て感動した」とのことで……1966年からおよそ10年にわたって中国全土を混乱させた文化大革命が収束して、外国映画が解禁されたタイミングで追捕は公開されました。これまで娯楽と切り離された生活をしてきた人たちが、生まれて初めて触れたエンタテインメントがスクリーン上の健さんだったワケですから、その印象がどれほど強烈なものだったかは想像に難くありません。

()゚ロ゚)」オオオオオッッッ

――そして「いつか、高倉さんの映画を撮りたい」と願い続けた张艺谋(チャン・イーモウ)監督も2005年、ついに『単騎、千里を走る』(原題:千里走单骑)という作品で、その夢をかなえました。この映画はその年の東京国際映画祭オープニング作品として上映され、中国でも大ヒット。あらためて若い世代にも、高倉健さんの魅力を伝えて話題になりました。健さんはいまも、中国で最も愛されている日本人のひとりだと思いますよ。

そうなんだー、カッコいいなー。

――最近の日本エンタメ事情については、佐江ちゃんもご存知のとおり10代・20代のファンならインターネット等を駆使してリアルタイムで追っているので、日本とあまり変わらない感覚で話せると思います。が、一緒にお仕事をする40代以上、つまりエンタメ界をはじめ中国経済を中心になって動かしている世代の方たちとより幅広い会話を楽しむなら、彼らに大きな影響を与えてきてくれた先輩や作品については、ぜひ押さえておきたいトピックといえるのではないでしょうか。

そっかー、大先輩がいっぱいいるんですね~σ(*′∀`)b【━尊゚+.敬━】

――先々週から3回にわたって、中国の方たちとの「話題」について追いかけてきましたが、いかがでしたか?佐江ちゃんの興味関心(第11回)や大切にしている家族のこと(第12回)、またご自分のルーツともいえる日本文化のことについて、あらためて見直してみるきっかけになったかな?

はい、ありがとうございます!5月25日にはSNH48のイベントで上海にも行くので、これまで勉強してきたことを活かして、現地のファンやメンバー、お世話になる方たちと少しでも多く交流できるように頑張ってきます!来週は、そんなお話もできたらいいな。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます!谢谢大家!(皆さん、ありがとう)

 

【今回のまとめ】
◎中国入門ポイント
☆中国に限らず海外では“日本人”としての振る舞いや会話を求められることが少なくありません。ぜひ自国の伝統文化などについて予習しておきましょう。また中国のアラフォー世代以上、つまり現在ビジネスの中枢を握っている層の間で、意外にも広く知られ、かつ愛されている日本のエンタメ文化があります。共通の話題として当時の公開作品等、押さえておきたいものです。

◎今回のフレーズ&単語
和服【héfú】:和服
歌舞伎【Gēwŭjì】:歌舞伎
京剧【Jīngjù】:京劇(中国の伝統演劇。ユネスコ世界無形文化遺産)
昆剧【Kūnjù】:昆劇(中国の伝統演劇で、京劇等の祖といわれる。ユネスコ世界無形文化遺産)
梅兰芳【Méi Lánfāng】:梅蘭芳=メイランファン(1894~1961。京劇の名女形として有名)
高仓健【Gāocāng Jiàn】:高倉健(中国で最も有名な日本人俳優。中高年層を中心に絶大な人気を誇る)
张艺谋【Zhāng Yìmóu】:張芸謀(映画監督)
追捕【Zhuībŭ】:映画『君よ憤怒の河を渉れ』
千里走单骑【Qiānlǐ zŏu dānqí】:映画『単騎、千里を走る』(元は『三国志』中のエピソードのひとつで、中国の各種伝統演劇の演目にもなっている)

※1『紅いコーリャン』(原題:红高粱 【Hóng gāoliáng】映画『紅いコーリャン』[原作はノーベル賞作家の莫言【Mò Yán】])でベルリン国際映画祭金熊賞受賞。『秋菊の物語』(同:秋菊打官司 【Qiūjú dǎ guānsī】)と『あの子を探して』(同:一个都不能少 【Yíge dōu bùnéng shǎo】)でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。また『活きる』(同:活着【Huózhe】)ではカンヌ国際映画祭審査員特別賞も受賞している。

*)本文中の赤字は、中国語です。
*)中国語の表記は、上海(大陸)で使われている簡体字を使用しています。また【 】内には、中国語の発音表記として漢語拼音(ピンイン)を記しています。


撮影:中川有紀子 スタイリング:松谷えり子 ヘア&メイク:小林あやめ 衣装協力:帽子/BACKS  ニットトップス/w♡c(w♡c ヘッドオフィス) 03-5456-6033 デニムパンツ/moussy(バロックジャパンリミテッド) 03-6730-9191 その他スタイリスト私物

1990年8月13日生まれ。東京都出身。O型。AKB48のメンバーとして活躍。2016年4月1日に旧チームK特別記念公演でグループを卒業。『王家の紋章』、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』、『TOKYO TRIBE』、ユーミン×帝劇vol.3『朝陽の中で微笑んで』、地球ゴージャス プロデュース公演 Vol.15『ZEROTOPIA』、『ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」Season2』などに出演。連載から生まれた書籍「これさえあれば。」が発売中。Official

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます
バックナンバー