(左から)堤幸彦監督、宅間孝行

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間孝行主宰の劇団「東京セレソンデラックス」の伝説的な舞台を実写映画化した『くちづけ』。メガホンを執った堤幸彦監督と、舞台版同様うーやん役を連投した宅間が、今作での共同作業を経てクリエイターとしての想いを確かめ合ったことを報告した。

知的障がい者たちが集うグループホームを舞台に、天使のように無垢なマコ(貫地谷しほり)、そこで働くことになった元人気漫画家の父・愛情いっぽん(竹中直人)、そしてマコの王子様うーやんたちとの日々、娘と父の深い愛情を描く感動作。初映画化を迎えた生みの親の宅間は、「堤さんが監督を引受けてくださったので、素直に感謝しています」と感激の胸中を吐露。依頼を受けた堤監督も、「天命だと思いました。年齢的な理由があるとは思いますが、自分の世の中へ対する思い、エンタメ作品の限界を突破する意味でも、これはやらなくてはいけない仕事でした」と並々ならぬ決意でオファーを引受けたことを明かす。

実は堤監督、超人気エンタメ作品の数々を手がける一方で、近年『MY HOUSE』(11)、「Kesennuma,Voices.2 東日本大震災復興特別企画〜堤幸彦の記録〜」(12)などの社会派作品にも傾注。そのスタンスの変化に、本作を“天命”とさえ感じた理由がある。「今まで自分の意見を手がける作品に込めることなど、どうでもいいと思っていました。それが50歳をすぎてみると、このままでは上手く死ねないなあと(笑)。世の中を見据えて作品を作らなくてはと思っていた矢先に、このオファーを受けました。だから天命だと思ったわけですね」。

この堤監督の想いに、「『くちづけ』を作った当時、堤さんと似たような思いでした」と宅間も同調する。「主宰者として劇団存続のために作品を作っていましたが、10年間やってきた時に、完璧に疲弊しました(笑)。その時、本当に自分の琴線に触れる作品を作ろうと初めて思いました」。それが『くちづけ』。10年目の節目の作品だった。「お客さんではなく、自分に寄り添って生まれた作品でした。僕の自分探しみたいな意味がありました」。

堤監督は社会に目を向け、宅間は自問自答した。見る方向は違うが、作りたいものを作る想いは同じだった。そのふたつの想いと才能が共鳴した感動作。全身で受け止めてほしい!

『くちづけ』
公開中

取材・文・写真:鴇田 崇