大貫勇輔  撮影:源 賀津己 大貫勇輔  撮影:源 賀津己

バレエ『白鳥の湖』の主人公を王子に置き換え、男性ダンサーが踊る“白鳥”たちとの愛の行方を描いた『スワン・レイク』(1995年初演)が大ヒットを記録、その後も美意識に貫かれた作品の数々で話題を集めてきた演出・振付家のマシュー・ボーン。彼の7年ぶりの新作来日公演となるのがこの『ドリアン・グレイ』だ。7月に上演される日本バージョンは、メイン3役を日英のダブルキャストで演じ、その他は日本人キャストで構成。マシューの地元・英国で行われたオーディションでドリアン役(リチャード・ウィンザーとダブルキャスト)を射止めた大貫勇輔に、その意気込みを聞いた。

マシュー・ボーンの『ドリアン・グレイ』チケット情報

原作は19世紀末の英国人作家オスカー・ワイルドの同名小説。美青年ドリアンは美貌と若さの衰えを恐れる余り悪事を重ねてゆく。奇妙なことに、それにつれて彼の肖像画が醜くなることに気づいたドリアンは…。昨年、英国の名門サドラーズ・ウェルズ劇場で行われたオーディションについて、大貫はこう振り返る。「オーディションではその場で教えてもらった振り付けを2種類踊ったんですが、1つめは全力で踊ったせいかマシューから“トゥー・マッチ(熱すぎる)”と言われたんです。僕はどうしてもドリアン役をやりたかったので、ふたつめの振付は力の抜けたセクシーさを意識して踊ってみました。“君に決めた”と言われた時は、本当に嬉しかったですね」。

宣伝ポスターでは、鍛え抜かれた美しい裸体を披露している大貫。劇中では男同士の過激シーンも描かれるとか。「7歳の時からダンスをやっているので、体をさらしての表現に戸惑いは全くないです(笑)。むしろ作品の世界観を壊さないように、体づくりに励まなくてはと思っているところ。それに元々、映画でも舞台でも一見グロテスクな裏に何か美しいものを秘めているような作品が好きなんですよ。例えば、つぼみだった花が徐々に美しく咲いて、それからだんだんとしおれていく、そういう“限りあるもの”を美しいと感じます。もしかしたらこの作品も、似ている部分があるのかもしれないと」。

そう語る大貫は、現在24歳。昨年のミュージカル『キャバレー』でヒロインの相手役に抜擢され、俳優業にも足を踏み出したばかりだ。「ダンスはカウントが重要ですが、演技は距離感とかニュアンスのような、型以外のもので大きく左右されることが分かってきました。今はお芝居をすることがすごく楽しい。“やり続けること”の難しさを忘れないように、これからも頑張っていきたいです」。

公演は7月11日(木)から15日(月・祝)まで、東京・渋谷のBunkamura オーチャードホールにて。チケット発売中。

取材・文:佐藤さくら