『グランド・マスター』に出演したチャン・ツィイー 写真:Stuart Wilson/Getty Images for Gaga

ウォン・カーウァイ監督の最新作『グランド・マスター』に出演したチャン・ツィイーがインタビューに応じた。

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本作は、中国武術を極めた“グランド・マスター”の壮絶な人生を、カーウァイ監督の映像美で描いたアクション大作。後にブルース・リーの師匠になったイップ・マン(トニー・レオン)や、父を殺され復讐を誓うゴン・ルオメイ(ツィイー)らが時代の波に翻弄されながら武術の道を極めようとする姿を描いている。

本作で彼女が演じたゴン・ルオメイは、北の宗師ゴン・パオセンを父に持つ武術の達人として登場するが、彼女の人生は劇中で大きく動く。一度は武術の道を捨てようとした彼女は、やがて“武術以外のすべて”を捨てることを決める。その生き様は最後の最後まで予想できないが、ツィイーもまた「ウォン・カーウァイ監督作品だから脚本があるわけじゃないし、どんなキャラクターになるか、どんな性格をしているのか、最初は全然わからないところがおもしろいの。監督にも、私にも、他のみんなにもそれはミステリー。完成した映画を観て『ああ、3年掛けてこういうキャラクターを演じたんだな』ってわかるの」と笑顔を見せる。

脚本もなく、演じるキャラクターの性格もわからない。普通の俳優であれば戸惑うどころか逃げ出したくなるだろう。しかしツィイーは「とにかくたくさんテイクを重ねて、いろいろ演じてみているの。その中から最終的にどれを選ぶかは監督が決めること。まるで演技学校に戻るようなすばらしい機会よ。笑っている日があれば、泣いている日もある。そういったプロセスを通して大いに学び、成長できるの。いろいろなことにトライしていると、知らなかった自分の演技の幅がどんどん広くなって、ああ、こんなこともできるんだ!て思えるのね」という。

どんな役を演じるかは完成までわからない。そのシーンで何を演じるかは直前までわからない。しかし、カメラの前に立っているのは、間違いなく“チャン・ツィイー本人”だ。「準備ができないからこそ、すべてが私たちのハートから来ているから。だから私はウォン・カーウァイ監督が大好き」と語る彼女にとって、ゴン・ルオメイは“役”を超えた存在になっているようだ。

『グランド・マスター』
5月31日(金)よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー