『バレット』のウォルター・ヒル監督

6月1日(土)より公開となるシルベスター・スタローン主演の『バレット』で、10年ぶりに映画の監督に復帰したウォルター・ヒル。『48時間』『ストリート・オブ・ファイヤー』『ラストマン・スタンディング』等で知られる、そんなアクションの鬼才が『バレット』の宣伝のために来日。注目のこの新作と、映画製作について語った。

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アーノルド・シュワルツェネッガーやブルース・ウィリスら、名だたるアクション・スターと仕事をしてきたヒル監督だが、スタローンとのタッグは初。これは彼の長いキャリアを考えると少々意外な気もする。「スタローンとは、彼が『ロッキー』でブレイクする前からの知り合いなんだ。同じ弁護士を雇っていたのが縁でね。“いつか一緒に仕事を”と言い合ってはいたが、“もう年齢的にヤバいぞ”ということでようやく実現した」と、監督は笑う。また、スタローンを演出する上で、彼は自然さを心掛けたとのこと。「スタローンはタイプ的に大ぶりの演技をする役者だ。感情を大きく表現しがちだから、今回は抑えてもらった。そうした方が自然なユーモアも出てくるからね」と語る。

この10年、ヒル監督はテレビの演出を手がけることこそあったが、映画から距離を置いていた。その理由を、「『スーパーノヴァ』から降番せざるをえなかったことや、気に入っていた『デッドロック』がヒットせず、頑張ってくれた俳優たちに申し訳なかったことが重なった。それが契機となったね。それまで働き詰めだったから、休みをとって家族と過ごそうと思ったんだ」とヒル監督は説明する。「映画業界自体に文句を付ける気はない。素晴らしいキャリアを歩ませてもらえたし、私はそもそも不満を述べることが好きではない。いや、不満はあるが口にはしない、と言い直しておこう(笑)」

発言の端々に、作品そのままの男気のある姿勢を覗かせるヒル監督。自分が撮った映画に100パーセント満足することはないと、彼は言う。「当初の狙ったレベルに、出来上がった映画が達することは絶対にないんだよ。私は“こういう作品を撮ろう”とレベルを定めたら、それに近づけようと必死に作るだけだ」こんな姿勢を貫いているからこそ、ヒル監督の映画には常に熱いものが宿るのかもしれない。すでに次作としてスリラーの古典『何がジェーンに起ったか?』のリメイクに取りかかっているとのこと。まずは新作『バレット』で、71歳となっても衰えぬ鬼才の熱意を感じて欲しい。

『バレット』
6月1日(土)から全国ロードショー

取材・文:相馬学