(左から)宍戸大裕監督、飯田基晴プロデューサー

年間30万頭以上の犬猫が殺処分される日本の現実を見つめたドキュメンタリー映画『犬と猫と人間と』。2009年に公開され大反響を呼んだ同作の続編『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』が完成した。今回眼差しを注ぐのは東日本大震災及び原発事故で路頭に迷う動物たちと、彼らと向き合う人々の姿。宮城県出身の宍戸大裕監督と、前作の監督で今回は製作に回った飯田基晴プロデューサーがこの作品に込めた想いを語ってくれた。

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東日本大震災後、被災地の人々の声を届けるドキュメンタリーが数多く発表されている。でも、言葉を発せない動物という声なきものの声を届ける作品は無かったのではないだろうか。本作は、いわばその見落とされていた動物たちと、彼らに手を差し伸べる人間たちに焦点を当てた。ここに至った経緯について宍戸監督はこう言う。「当初は“被災した自分の地元(宮城県名取市)の人々を記録しておきたい”という思いから、震災から8日目に現地に向かいました。でも、変わり果てた町の状況に絶句し、とてもじゃないけど、人々にカメラを向ける気になれない。そんなとき、ふと目に入ってきたのが飼い主を失ったと思われる犬の姿でした。その瞬間、気づいたんです“被災したのは人間だけではない”と」。

その後、福島を訪れた監督は、原発事故で警戒区域にされたエリアでまさに死に絶えようとする家畜の牛や、すでに息絶えた動物の遺体を見て、まったく伝えられていない被災地の動物たちの惨状を取材することを決意。彼の映画製作の師でもある飯田プロデューサーの協力を得て完成した作品は、家族同然のペットを失った飼い主、動物たちの救済に動き出した団体及びボランティアの人々などの声を丹念にくみとる。そこから見えてくるのは、単なる動物の話で片付けられない、被災地の現実そのもの。その彼らの言葉や姿を前にしたとき、同時に我々は今回の震災で忘れ去られようとしていた“生命”と正面から向き合うことになる。

公開を迎えた今、ふたりはこう語りかける。「約1年半取材して、感じたのは震災の風化。ここに映し出される動物たちの現状は、現在の被災地に生きる人々の現状とも重なる。この映画が被災地を知るきっかけになってくれたらと思います」(宍戸)。「無残に見捨てられた命がある。一方でその命の救出に今も奔走している人がいる。私も含めてあらためて“命”について考える機会になってくれたらうれしい」(飯田)。

『犬と猫と人間と2 動物たちの大震災』
公開中

取材・文・写真:水上賢治