(左から)瀧本美織、ジブリの鈴木敏夫プロデューサー

宮崎駿監督によるスタジオジブリ最新作『風立ちぬ』のヒロイン役のボイスキャストを女優の瀧本美織が担当することが発表され、6日に都内スタジオでジブリの鈴木敏夫プロデューサーも出席しての中間報告会見が行われた。

すでに主人公の声をジブリとも縁の深い映画監督の庵野秀明氏が務めることは発表されていたが、今回、ヒロイン役の瀧本に加え、西島秀俊、西村雅彦、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎が声優として参加することも新たに発表された。

この日は劇場で予告編として上映される4分間の特別映像も上映。物語は零戦の設計者として知られる堀越二郎氏と文学者の堀辰雄氏のふたりを重ねた青年・二郎を主人公としており、関東大震災に不況、そして未曽有の大戦へと突入していく大正から昭和の日本を舞台に二郎と薄幸の少女・菜穂子の出会いと別れを描く。

鈴木プロデューサーによると3月、4月ですでに絵の作業は終えており、現在は声優陣の声と効果音、そして久石譲氏による音楽をミックスしていく音の作業の真っただ中で順調に行けば6月17日(月)に関係者によるゼロ号試写が行われる予定だという。

ヒロインの菜穂子役の瀧本の起用に関しては、現在制作中の同スタジオのアニメ『かぐや姫の物語』の高畑勲監督の推薦があったという。鈴木プロデューサーは「高畑さんがなぜか瀧本さんについて詳しくて。宮崎駿は高畑さんの言うことはたいてい、受け入れるので『(高畑の言うことは)間違いない』と言ってその時点でほぼ決まった」と説明。この話に瀧本は「初めて知りました!」と驚いた様子。鈴木プロデューサーはさらに「宮さんは『芝居がいい』でも『声質が(イメージと)違う』と言ってた。でも『あの芝居があるならうまくいくよ』と決めた。不思議なことに(スタジオに)来てもらってやり始めたら、オーディションの時と声質が変わってて、それが宮さんの理想通りで喜んでた」と明かした。瀧本はアフレコをふり返り「自然体を収録していただきました。あっという間に終わってしまい『いやだ、もっとここにいたい!』って思いました」と語った。

4分間の映像では関東大震災で家屋が崩れ、街が炎に包まれる描写もあったが、鈴木プロデューサーによると、2010年に企画の話し合いが始まり、年明けに絵コンテを開始。ちょうど3月10日に地震のシーンを描き上げ、その翌日に東日本大震災が発生したという。「さすがに宮崎駿も悩んで何度も話したけど、僕は『歴史の事実に手心を加えるのは違うと思う』と伝え、そのままやろうとなった」と説明し「映画は時代の産物だから影響を受けるものだけど、だからってあまりにとらわれるのはおかしい。ぶれてはいけない」と持論を語った。

『風立ちぬ』
7月20日(土)全国ロードショー