選択的夫婦別姓をめぐる裁判、ふたたび

2015年の夫婦別姓訴訟を覚えていますか?

最高裁で「『夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する』という現行の民法750条夫婦同氏を合憲とする」という判決が出て終了しましたが、2018年新年早々、ふたたび選択的夫婦別姓をめぐって裁判が行われます。

原告のひとりは、育休を3回取ったことでも知られるサイボウズの青野慶久社長です。青野さんは、戸籍上は妻の姓(氏)を選択している数少ない「妻氏婚(つまうじこん)」者。

現在の日本では96%の夫婦が夫の姓を選択しているというのですから、育休に続いて、筋金入りの少数派ですよね。

もともと青野さん夫妻が妻の姓を選んだ背景には、妻が「苗字を変えたくない」と言ったことがきっかけだったとか。

それを「おもしろそう」と感じた青野さんに、姓が変わることへの抵抗はなかったそうですが、その後、青野さんを待ち受けていたのは、不利益と呼んでいいほどの数々の面倒な手続きや困難、そして金銭的な負担でした。

その後、青野さんはメディアなどを通じて、積極的に夫婦別姓容認の必要性を声に出すようになりました。そして現在に至るまで、過剰な反応に出会うことも少なくなかったものの、応援する声も高まっていったそうです。

ここがヘンだよ、日本の戸籍法

青野さんたちはなにも、夫婦同姓を廃止すべきと言っているわけではありません。

今回の裁判では、民法ではなく、姓に関する「戸籍法」の矛盾を突くのがねらいだそう。

たとえば、日本人と外国人の結婚では、同姓にするか、別姓にするかは選択可能です。離婚の場合も、選べます。また、日本人同士の離婚の場合も、離婚した相手の姓のままでいることは可能です。それなのに、日本人同士が結婚するときだけ、別姓が認められないのはおかしい、というのが青野さんたち側の言い分です。

「選択的」ですから、同姓にしたい人はできる、というのがポイントです。

夫婦別姓が認められることで、誰の生き方も否定しない世界が実現するのです。多様性が求められる時代にふさわしいのではないでしょうか。

時代は夫婦別姓に追い風?

2013年の調査によると、20代の既婚女性の四分の一、30代では20%が職場では旧姓で通しているという結果が出ています。

職場の通称としての旧姓使用については、社会的にも少しずつ、認められるようになってきています。

2017年にはパスポートに旧姓が併記されるようになりましたし(ただし電子データは戸籍姓のみ)、裁判官を含むすべての裁判所の職員に通称使用が認められ、今年1月には、最高裁女性判事にも適用されます。

今後、住民票やマイナンバーにもそういった流れが出てくるとみられています。

時代は選択的夫婦別姓に向かいつつある、と言えるのではないでしょうか。

海外では洋の東西を問わず、多くの国が夫婦別姓もしくは選択的夫婦別姓ですし、国連は、日本の民法750条について、2016年に三度目の是正勧告を出しています。

夫婦別姓の今

サイボウズ 青野慶久社長

昨年12月20日に、NPOファザーリングジャパン主催で、選択的夫婦別姓FJ緊急フォーラム」が開催されました。

パネリストには、先のサイボウズの青野さんをはじめ、少子化ジャーナリストの白河桃子さん、2015年の現行の夫婦同姓の民法をめぐる裁判を担当した弁護士の榊原富士子さん、結婚のさまざまな形を追った『オトナ婚です、わたしたち』の著者の大塚玲子さん、元妻側改姓当事者(現事実婚)の吉田尚史さんが登壇、また青野さんたちの裁判を担当する作花知志弁護士はスカイプで出演し、夫婦別姓の今について、熱いトークが繰り広げられました。

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